大雨をもたらした台風１０号は、夏台風の特徴の一つである「ノロノロ台風」だった。ゆっくりと進み、海から供給される熱エネルギーを使って発達。気象庁は「身の安全確保を」と最大級の警戒を呼び掛けた▼さまざまな要素が台風の勢力に影響を与えるが、地球温暖化に伴う海面水温の上昇もその一つ。温度が高いほど多くのエネルギーを得て強く発達する傾向がある▼温暖化は海面の水温だけでなく水位にも関係してくる。国連が先月公表した報告書によると、今世紀末までに世界の平均気温が産業革命前から約３度高くなると仮定し試算したところ、海面上昇がさらに加速する結果となった▼２０５０年には２０年と比べ大阪で２７センチ、東京で１３センチの海面上昇を予測。世界の主要都市では米ニューオーリンズで４１センチ、ニューヨークで２６センチ、中国・上海で２４センチ、英ロンドンで１９センチの上昇を見込む。試算は各国が現行の温室効果ガス削減目標を実現することが前提だ▼日本が５０年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言してから１０月で５年目に入る。温暖化の影響が顕在化する中、目標達成へ施策を加速させなければならない。