JACのインドネシアでの取り組み・上/世界水準の現場安全アピール

2024年9月12日 行政・団体 [1面]

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 ◇体験イベントで響く「ヨシ!」
 世界4位の2・8億人が暮らし、うち半数が30歳未満という若い労働力を抱えるインドネシア。特定技能外国人の送り出し国としてベトナムに次ぐシェアのインドネシアで、建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)が日本の建設業の魅力を積極的に発信している。工業高校の巡回訪問や各地で開く職種説明会など“草の根”で進めるPR活動の集大成として、日本の建設技術や安全衛生環境の体験イベントを盛大に開催。専門工事業団体や現地の送り出し機関も巻き込み、こちら側から現地の若者らにアウトリーチ(手を伸ばす)していく活動を加速する。=2面に関連記事
 首都ジャカルタ近郊の巨大なコンベンションセンターでJAC主催の「日本の建設業務体験会」が8月24日に開かれた。東西に細長いジャワ島と、海を隔てたスマトラ島から高校・大学関係者ら約100人が来場。足場や鉄筋、型枠の体験コーナーを設け、日本の安全対策や施工技術に触れてもらった。
 全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、岩田正吾会長)や日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)の会員などが自ら実演し生徒らに手ほどきするなど、目で見て実感できる内容とした。
 国際的な労働市場に詳しく、当日は日本の労働安全衛生環境の説明役として参加した弁護士の杉田昌平氏は「こうしたイベントは世界的に見ても画期的」と評価する。雇用側の業界団体が真正性の高い情報を直接発信することで「日本に働きにくるルートの透明性が高まる」。さらには世界トップレベルの安全ルールという「日本にある本来的な価値を世界の労働市場に示すことになる」と話す。
 会場内ではフルハーネス型安全帯を装着した生徒らの「ヨシ!」という声が響いた。最初は見よう見まねの「指さし呼称」も、はっきりと声に出してやると危険箇所に意識を向ける意味がよく分かる。
 こうした体験は、事故が多く安全性に乏しい現地で染みついた建設現場のイメージを覆すものだ。異国の建設業界への就労を心配する家族への説得材料にもなる。JACの山本博之専務理事はコンテンツ制作で足場体験に力を入れた理由として「まずは日本の安全を認知してもらう。そのための発信が大事だ」と強調する。
 インドネシア労働省から事務方トップのアンワル・サヌシ事務次官も会場に駆け付け、指さし呼称や鉄筋結束を自ら体験した。開幕式典であいさつしたサヌシ氏は、国内で労働力が豊富な状況が続く中、海外市場の需要に適応したスキルや知識を持つ人材を育成する必要性に言及。「まじめ」「一生懸命」という日本語でインドネシア人の国民性を紹介しながら、日本政府との間で「人材に関する相互利益、相互理解の架け橋を築く」と展望を語った。
 国土交通省からは蒔苗浩司官房審議官(不動産・建設経済局担当)が参加し、体験イベントを通じ日本の建設業の魅力が伝わり「今後もインドネシアから特定技能労働者が増えると期待する」と述べた。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)日本政府代表部の紀谷昌彦大使は、今回を皮切りに近隣諸国でも同様の取り組みを展開することに期待感を示し「日本との経済連携や人材交流が広くASEAN全域に広がり一層深まっていく」と意義を語った。