JACのインドネシアでの取り組み・下/求人から技能訓練まで一貫支援

2024年9月13日 行政・団体 [1面]

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 ◇現地送り出し機関をパートナーに
 建設分野の特定技能の業務区分が2022年8月に再編・統合され、コロナ禍で休止していた特定技能1号の海外試験が23年7月から動き出した。これと同時進行で建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)は、正会員の専門工事業団体が海外で取り組む採用活動や技能訓練を費用面で後押しする支援事業を推進する。現地の送り出し機関とパートナー関係を結び事業展開するインドネシアは、特に成果を上げているモデルケースと言える。=2面に関連記事
 インドネシアでは23年9月以降、各団体がJACの支援を受け職種説明会や技能訓練に取り組む=表参照。国内外で人材派遣などを手掛けるアウトソーシング(東京都千代田区、山崎高之社長)傘下で現地大手の送り出し機関のOSセルナジャヤが、各団体から受託する形で運営や参加者の募集をサポートする。
 職種説明会は日本の建設業に興味を持つきっかけになる。OSセルナジャヤは日本語などの基礎教育を行う研修センターをインドネシア各地に保有し、建設分野の技能訓練の専用施設も抱える。同社施設などで勉強しながら特定技能試験に臨み、晴れて合格すれば各団体が主体的に関わる技能訓練を経て日本に入国する。現地のパートナーと連携したスキームを構築し、外国人材の掘り起こしと円滑な受け入れを促進する。
 建設分野の特定技能は独自の手続きとして国土交通省による受け入れ計画の審査・認定が必要だ。JACの山本博之専務理事は入国・就労まで期間を要することをマイナスと捉えず、「スキルを上げ自信を持って日本に来てもらう」ための有効活用を提案する。現地で各職種に応じた技能や高度な日本語を前もって身に付けることで、特定技能2号への移行など将来的なステップアップの「発射台になる」と訴える。
 JACはインドネシア各地の工業高校を巡回訪問する“草の根”のPR活動を推進し、10月にはさらに訪問先を広げる予定。ジャワ島内だけでなくスマトラ島、スラウェシ島などほぼ全土を射程に入れる。経済発展が著しいジャカルタから離れると、地方に行けば行くほど就労機会や賃金水準に圧倒的な差がある。その分だけ賃金が高く技能習得にも有利な日本の就労環境が魅力的に映ることになる。
 8月24日の「日本の建設業務体験会」に東ジャワ州から遠路訪れた工業高校の生徒らは「日本で働きたい」と口々に話した。一方、来場した生徒へのアンケートでは日本で働く場合の不安として「日本語のコミュニケーション能力」が最も多く挙がった。特定技能制度を現地の若者にとって「チャンス」と前向きに捉える大学関係者も「ボトルネックは日本語。日本語を勉強できる機関が限られている印象がある」と指摘する。
 特に建設分野は専門用語が多い。技能実習生として近く来日するOSセルナジャヤの研修生からは「親方などの指示をきちんと受けられるだろうか」と不安がる声も聞かれた。育成就労制度の開始や特定技能外国人の受け入れ拡大を踏まえ、外国人労働者が「日本の建設業で働きたい」と思えるような教育環境や受け入れ態勢を、送り出し側と受け入れ側が連携し構築していく必要があるだろう。
 (編集部・沼沢善一郎)