回転窓/海を渡ったリンゴ

2024年9月17日 論説・コラム [1面]

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 果物の中でもリンゴがおいしい季節を迎えた。近くの店には早生種の「サンつがる」「きおう」が並び、これから収穫時期の異なる多くの他品種も出荷されていく▼品種ごとに生食やジュース、お菓子に適するなどの個性を持つリンゴ。甘味と酸味の強弱が示された食味チャートを見れば、自分好みの品種を選ぶことができる▼約90年前の1931年10月、青森県三沢村(現三沢市)の淋代海岸から「ミス・ビードル号」で太平洋無着陸横断初飛行を目指して出発する米国人飛行士2人に、村人が手渡したのは地元のリンゴ「紅玉」。そして横断飛行が成功すると、特設滑走路の整備など村人たちの献身的な協力に対し、返礼としてリンゴの穂木5本が贈られた▼その品種は鮮やかな紅色をした果皮の米国産「リチャードデリシャス」。穂木は県のりんご試験場で品種改良に利用され〈「リンゴ王国青森」の基礎を築いた〉(テイクオフみさわホームページより)という▼収穫の秋は台風などの風水害が多い季節でもある。リンゴが取り持った両国親善の史実に触れながら、各産地の“秋の実り”が被害を受けないよう願うばかり。