業界一丸で上限規制に対応、発注者の柔軟な対応不可欠/本社調査

2024年10月2日 論説・コラム [1面]

文字サイズ

 日刊建設工業新聞社がゼネコンや道路建設業、設備工事業に9月実施したアンケート(有効回答56社)では、時間外労働の罰則付き上限規制に苦慮しながらも懸命に残業削減に努める現状が浮き彫りとなった。魅力ある持続可能な産業を実現するため、1日発足した石破政権でも、建設業の働き方改革に最大限配慮した公共工事の強力推進や民間発注者への呼び掛けなどが求められる。
 「誰一人取り残されない働き方改革が必要だ」。あるゼネコンの幹部は建設業が若者に振り向いてもらうためにも、時間外労働の削減が欠かせないと訴える。
 アンケートでは4~6月に原則月45時間を超過した非管理職の割合を聞いたところ、土木職と建築職で6割超が低水準の「20%以内」だった。単純比較はできないが、1割程度にとどまった原則年360時間を基準とした2023年度から大幅に改善。法律で定められた年720時間、複数月平均で月80時間という特別条項に照らし合わせると、各社のさまざまな努力によって非管理職の大半が着実に残業や休日出勤を削減し、上限規制の順守に取り組んでいることが予想できる。
 国土交通省の23年度「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」(回答1302社)によると、上限規制適用前の1月1日時点で直接雇用する技術者の時間外労働が特別条項を超過すると回答した企業は17・2%だった。本紙のアンケートでは、発注者に対して現場の実情への理解を求める社が多かった。
 「上限規制適用の初年度ということで、年度末に向けて現状では想定できていない問題が発生することも十分に考えられる」と指摘するのは別のゼネコン関係者。予期しない災害対応による通常工事への影響などを見越し、発注者には「工期延伸の協議、適正工期確保に対し柔軟な対応をお願いしたい」と強調する。
 石破政権の発足を受けて同日、建設業団体トップがコメントを発表。日本建設業連合会の宮本洋一会長と全国建設業協会の今井雅則会長、全国中小建設業協会の土志田領司会長は、引き続き国土強靱化対策を推進するよう求めた。建設業が働き方改革を推進しながら国土や地域の守り手としての役割を果たし続けていくためにも、発注者には現場に寄り添う柔軟な対応が不可欠となる。