次代の公益-PFI施行から25年・4/最良の提案を公益にする手だて

2024年10月10日 行政・団体 [1面]

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 ◇公共性と効率性両立実現、官民の手腕試される
 初期のPFIで当初の設定期間を終えた事業が出てきている。運営メインとなった事業は指定管理者制度や従来方式が管理手法に採用される一方、改修や施設の新規整備などを伴う場合はPFIを継続する管理者がいる。
 「初の河川PFI」と注目された国土交通省関東地方整備局と千葉県香取市の佐原広域交流拠点整備事業は、期間が2024年度まで。両者は事業の定量的・定性的に効果を検証し「PFI手法の採用は妥当」と評価。PFIの継続を決め、同市は25年度からの改修運営の事業者選定に入った。
 当時「国内最大規模の病院PFI」とされた東京都の多摩広域基幹病院の事業期間も24年度まで。別館の建設や改築を行うことで、25年度からもPFIで整備や管理・運営が行われる。事業者との契約には、技術革新に伴うサービス対価の協議を認めるという画期的な事項が盛り込まれた。
 国や地方自治体のPFIの経験、事例が積み上がってきたが、その弊害も指摘されている。ある自治体は、2期目として期間5年の管理運営事業を実施中。実施に当たり1期で改修した施設の存廃を決められなかった。PFI事業の契約延長の前例がなく、予算支出の慣例もあって、アドバイザリー料などの支出が再び必要になる新規のPFI事業を短期で行うことにした。
 繰り延べ払いが可能なPFIの採用を見送って、通常別契約となる設計・施工の費用を運営段階で支払うという、行政ルールから逸脱したPPPを続ける自治体もある。政府のPFI推進委員会のある委員は「役所の都合で住民や事業者が置き去りのPPP(PFI)が懸念される」と指摘する。
 同委員会の委員長代理などを歴任し、公民連携の議論を先導してきた東洋大学の根本祐二教授は、PFI法が公共調達に与えた影響について「競争原理を入れながら、受発注者の間であいまいだったリスク、契約を明確にした」と話す。
 25年の歴史の中で、官民のリスク分担に偏りがあったり、要求性能や契約で公共性を十分に定義できなかったりしたPFI事業ほど、運営や事業者選定が難航してきた。公共性がしっかりと定義され、事業者が利益を得ながら契約を履行すれば、公共性が確保され続けることも証明された。
 公共事業は費用対効果や効率性も重視される。根本教授は「PFIはトレードオフの関係にある公共性と効率性を同時に実現する手法」と評価する。社会的に最良の提案が公益になるなら、PFIは公益を形にする手だてとなる。どこを向いてどう使うか。官と民の視線と手腕が試される。=おわり
 (編集部・溝口和幸)