回転窓/電子化の波と紙の魅力

2024年10月10日 論説・コラム [1面]

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 取材でよく訪れる東京都内の自治体庁舎内には、行政関連資料や新聞各紙を置いた資料室がある。建築物を建てる際の紛争防止が目的の標識設置届や議会資料を閲覧するため、ほぼ毎回のように立ち寄っている▼先日、資料室に入ると9月末に閉鎖するとの張り紙があった。担当者に聞いたところ、利用者の減少や資料の電子化が進んだ結果、資料室のスペースが不要になったという。そばで新聞を読んでいた利用者が閉鎖を惜しんでいた▼コロナ禍でテレワークが進んだこともあり、企業の多くが社内文書の電子化を図っている。クラウドサービスを展開するペーパーロジック(東京都港区)が2023年に行った調査では、約6割の企業が「ペーパーレス化を推進している」と回答した▼紙の良さは書き込めるだけでなく、記憶の定着にも役立つ。電子書籍の登場で紙の書籍は売れ行きが低迷しているが、手元に残るのも魅力だろう▼福島県の郡山市立美術館で竹久夢二らが手掛けた本や雑誌の装丁・装画を展示する「大正イマジュリィの世界」が27日まで開催されている。紙に描かれたモダンデザインの鑑賞を楽しみたい。