石破茂首相(自民党総裁)は28日、党本部で記者会見し、27日投開票の第50回衆院選を受けた政権運営などについて話した。首相続投を表明した上で、政権の枠組みについて「この時点で連立は想定していない。(他党と)よく協議する」と語った。編成を指示していた国費ベースで2023年度の約13兆円を上回る規模の24年度補正予算案に関しては「党派を超えて優れた方策を採り入れ、実施していく」と述べた。
衆院選は28日午前に全議席が確定し、連立政権を組む自民党と公明党は過半数(233議席)を割り込んだ。自民党が単独過半数を失うのは2009年の衆院選以来。会見で石破首相は落選閣僚の後任を「早急に決めなければならない」と話した。看板政策の「地方創生」は年末に基本的な考えをまとめる。設置準備を指示した防災庁は「準備室を立ち上げ、具体的な議論を進める」とした。
毎年度の補正予算では「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の公共事業関係費が手当てされてきている。年末にかけては25年度当初予算をはじめ税財政の議論が本格化する。開始時期が先送りされている施設整備を含む防衛力強化のための増税対応をはじめ、政治判断が必要な政策課題は多い。ただ、野党の躍進で政局が流動化した。衆院選から30日以内に召集される特別国会の首相指名選挙で選出されても政権運営は不安定になるのが必至な情勢にある。
補正予算案に関し、政府内には「必要な分を淡々と要求する」と冷静な受け止めがある。府省庁のある幹部は「準備は進めている」とした上で「政権がどうなるか、財務省との折衝がどうなるか」を課題に挙げた。各党は公約で防災対策を重視する方針を掲げ、インフラ老朽化対策への理解もあった。この幹部は政権交代に至った09年衆院選を振り返り「当時ほど公共事業の風当たりは強くない」と見る。政府内には当初予算で微増の公共事業関係費への関心も高まっている。
国土強靭化にはさまざまな意見が出てきている。都道府県建設業協会のある会長は「一丁目一番地」として「政権がどうなろうと、横串を刺して地域を守る政策を進めねばならない」と指摘。政治との向き合い方を地域レベルで議論することを求める別協会の幹部もいる。
政府内には「事業量確保に補正予算の積み増しが必要」(出先機関幹部)との見方もある。5か年加速化対策後継の実施中期計画は、24年度中の閣議決定を求める意見が政府内外にあり、改めて行方が注目される。