近畿大学は2025年4月、建築学部にオンライン学習による「通信教育課程」を国内で初めて開設する。1級建築士の受験資格が取得できるプログラムを用意し、建設業で働く一般職や営業職の社会人などを対象にリカレント・リスキリング(学び直し)の場を提供。入学試験を課さず、誰でも建築士試験の受験資格を得られるようにすることで専門職を育成し、業界の人材確保につなげたい考えだ。25年1月に入学受け付けを開始する。
新設するのは「近畿大学建築学部オンライン学士プログラム」。最終学歴が高校卒業と同程度の場合は1年次、大学・短期大学や専門学校の卒業者などは3年次編入で入学する。定員は1年生が100人、3年生編入は500人を予定。
近畿大は他大学に先駆けて1957年に通信教育部を設置。法学部や短期大学部で培ったオンライン学習のノウハウを強みに、建築学部でもニーズに応じた高品質な授業を展開する。コロナ禍をきっかけに普及したオンデマンド教育の知見を生かし、新たな教材動画の作成を進めている。
同プログラムは日常的にテキストやオンデマンド教材で学習するeラーニングと、2~3カ月に1回、製図や模型の設計演習を行うスクーリング(面接授業)を並行して実施する。eラーニングは受講生それぞれのライフスタイルに沿って自宅で好きな時間に学習が可能。オンデマンド教材は授業1回当たり3セクションで構成し、全問正解すれば次の回に進むことができる。スクーリングは大阪と東京、福岡に対面授業が可能な会場を開設するほか、オンラインで受講することもでき、通学不要で卒業できる。
建築学部の山口健太郎教授は「通信教育課程は1人で学習を継続しなければいけないイメージが強いが、スクーリングをコミュニケーションの場として活用してほしい」と期待を込める。魚谷剛紀講師は「多様な年代や職種の受講生が集まって議論できるのが通信教育課程の対面授業の大きなメリット」と話す。
卒業までに1年次入学者は4年間で専門科目に外国語や総合科目を加えた124単位、3年次編入者は2年間で専門科目を中心に計66単位程度を修得。いずれも4年次に卒業ゼミを履修する。1級建築士の受験資格を取得するためには指定科目のうち60単位以上の修得を必須とする。
受講生らは東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)内のアカデミックシアターなど最新施設をはじめ各キャンパスの図書館を自由に活用できる。マイクロソフトオフィスなどのウェブサービスの提供も受けられる。通信教育部学生センターの若林武敏事務長は「学習のモチベーション維持のために最新鋭の施設やサービスを提供できるのが近畿大学の強み」だと強調する。
学費は1年次入学者が通学課程の5分の1に相当する125万4000円(4年間)、3年次編入者が68万2000円(2年間)。4年次までに修了できなかった場合でも、年間3万円の在籍延長料を支払うと翌年以降も自分のペースで学習を継続できる。
近畿大は11月6、17、30日、入学募集に向けたオンライン説明会を開く。