全国建設業協会(全建、今井雅則会長)と都道府県建設業協会、国土交通省らによる2024年度地域懇談会・ブロック会議が、29日の北陸地区で全日程を終えた。自然災害の激甚化や時間外労働の上限規制、資機材価格の上昇など、建設業を取り巻く状況は一段と厳しさを増す。業界側はこれらの現状への危機感を強く訴えると同時に、地域建設業が今後も地域の担い手として役割を果たすための方策を求めた。
「地元の建設業に就職する学生が年々減少し、ここ数年は全く人材を確保できていない企業も多い」。東北地区でのブロック会議では、福島県建設業協会が担い手の確保に苦戦している現状を明かした。福島建協は「この状況が続けば、近い将来中山間地域を中心に企業の廃業が相次ぐ。インフラの維持管理もままならなくなる」とも指摘し、若い担い手の入職を促す施策が必要だと強調した。
建設業の担い手不足は全地区のブロック会議で議題に挙がった。全建が会員企業に行った調査によると、地域建設業が持続していくための課題で「担い手の確保・定着」(89・5%)との回答が最も多かった。「技能者の高齢化が深刻」「今後新規入職者が入らないと、事業の継続にも影響が出かねない」。アンケートの自由記述からは経営者らの苦悩がにじむ。
現状からの脱却に向け、各地の会合では協会側から国交省などに対してさまざまな提案が寄せられた。四国地区は人手不足をカバーするため、外国人材の受け入れを円滑化する支援策の整備と充実を要望。中国地区は建設業のイメージアップに向けた広報活動の強化で支援を求めた。
就職先として魅力ある業界であるためには、他産業と遜色ない給与であることも欠かせない要素だ。担い手を確保する一環で、公共工事設計労務単価の引き上げを求める声も多く上がった。群馬県建設業協会は「賃金を下請までしっかり行き渡らせるには、根本的に設計労務単価の設定手法の変更が必要」として、市況に応じた柔軟な単価設定や、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルに応じた単価の設定を呼び掛けた。
近畿地区からは「限られた人材と費用の中で若年入職者を確保・育成し、技術の継承を行うことは中小企業では大きな費用負担だ」との指摘も挙がった。公共工事設計労務単価は12年連続で増加している。この機運を逃さず、賃金も含めた建設業界の魅力向上へ働き掛けていく。