炎重工/普及価格帯の水上ドローンを市場投入、自律航行機能の追加も検討

2024年10月31日 技術・商品 [14面]

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 空中でも水中でもない「水上ドローン」が注目されている。岸壁など構造物や湖底・海底の調査だけでなく、水難救助、レジャーなど幅広い用途に活用が広がる。水上ドローンなどの研究や開発、販売を手掛ける炎重工(岩手県滝沢市、古澤洋将代表取締役)が、普及価格帯の新型水上ドローンを10月に発売。手頃な価格設定とさまざまな用途に対応できる柔軟性を武器に、水上ドローン市場の拡大を目指す。
 新型機「Swimmy Eye V1」は従来機と比べコンパクトな機体で、重量が約7・5キロ(バッテリーなどを含む)と軽量なのが特徴。販売価格も約100万円に設定し、水上ドローンの導入を検討しているユーザーにとって手に取りやすい機体に仕上げた。
 推進機は2軸の650ワットのモーターで、流速4ノットまで対応可能。重心を低くし、ひっくり返ることなく常に上を向くようになっている。波高も無制限で使用できるという。
 バッテリーは12アンペア時または24アンペア時のリチウムイオンを搭載し、全速力でも1時間以上の稼働時間を確保。通常の調査や画像撮影の場合、2~3時間程度作業を続けることができる。操作や映像伝送は2・4ギガヘルツ帯の電波を使い、専用コントローラーで200~300メートルの範囲で通信可能だ。
 カメラは前面に上下稼働するジンバル付き1920ピクセル×1080ピクセル(フルHD)を1基、底部に照明付き1280ピクセル×720ピクセル(HDTV)の水中カメラ1基を備える。岸壁などの点検作業では、前面カメラにより十分な解像度の動画や静止画が得られる。浅い場所や透明度の高い湖水では、底部水中カメラで撮影した画像で調査できる。
 本体後部のプラットフォーム部分にアクションカメラを備え自由な方向を撮影することもできる。マルチビームソナーや救助具などは機体後部のフックからえい航して使うことを想定している。
 同社は今後、顧客からの要望に応じアップグレードも計画。特にGNSS(全球測位衛星システム)による自律航行機能の追加を検討しているという。新規ユーザー向けに扱いやすい機体を目指した新型機。水上ドローン業界に新しい息吹をもたらしそうだ。

 □炎重工□
 2016年に創業。古澤氏は筑波大学大学院でシステム情報工学などを学び、IT系企業で介護用ロボットスーツの開発などを経験。東日本大震災を契機にふるさとへ戻り起業した。制御系技術を中心にした自動化技術が強み。水上ドローンも躯体から内部のシステムまで一貫して自社開発できるのが特徴だ。水上ドローンは大型から超小型までラインアップしている。