現場探訪/大規模物流拠点「北陸BASE」新築工事、設計・施工は佐藤工業

2024年10月31日 工事・計画 [3面]

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 富山県滑川市の北陸自動車道滑川IC付近で、佐藤工業が設計・施工した北陸建工グループの大規模物流拠点「北陸BASE」が31日に引き渡される。横幅50メートル、奥行き200メートルの建屋内を貫通する一本の大きな通行路を確保。大型トラックが直接乗り入れ、積み下ろしした後、ドライブスルーのように通り抜けるようにした。従来の物流施設では路上などで余儀なくされることも多い数時間に上る待機を解消。運転手不足が懸念される物流の2024年問題に有効なモデルケースの一つとなりそうだ。
 ◇屋内積み下ろしで物流効率化
 建設地は滑川市小林ほか。23年11月に着工し、今月26日に現地で竣工式が開かれた。鋼材メーカーである北陸建工グループの経営を統括管理する建工ホールディングスが建築工事、溶断切板加工などを手掛ける北陸熔断が造成・外構工事をそれぞれ発注した。建屋の構造と規模はS造平屋9774平方メートル。
 施設設計の特徴は物流の効率化を最重視し、建屋内のほぼ中心に大型トラックが入退場から積み下ろし作業までワンストップで対応できるドライブスルーのような延長約200メートル、幅約7メートルの通行路を設けたこと。入り口から建屋内に直接入ったトラックはそのまま各所で荷物を積み下ろしした後、屋外への出口に向かう。物流24年問題に対応し待機トラックをなくす狙いがある。
 施工では品質確保と同様、建設業の24年問題を意識し作業の効率化にもこだわった。当初は南北で高低差のあった敷地を平らにしてから建屋の基礎杭を打つ計画だった。しかし柱状地盤改良杭工法を採用した南側の低い方は、支持層と基礎の深さがほぼ同じ位置だったため、従来地盤のまま着工できると判断。空掘り部の掘削土量や土砂の運搬量を減らし、これらの作業で使う重機の二酸化炭素(CO2)排出量も削減できた。
 床面の土間コンクリート(約9700平方メートル)は5工区に分けて打設した。クラックが出やすいコンクリ打ち継ぎ部分にはあえてアングルを打ち込み、見た目の美しさにもこだわった。
 土間コンクリの鉄筋施工では、鉄筋が自由自在に折り畳める「鉄筋ジャバラユニット工法」を採用。事前に工場で大部分の鉄筋部材を先組み、ユニット化し、折り畳んだ状態で現場に運搬してから元の形状に復元して取り付けた。現場の五十川正樹所長(佐藤工業)によると、従来工法に比べ人員ベースで6、7割程度省力化し、工程短縮にも最も効果を発揮したという。
 約1年間の工事は無事故・無災害を達成した。工事関係者間で毎週綿密に打ち合わせすることにより作業の手戻りを極力防止。書類作成などの事務作業はバックオフィス化することで時間外労働を削減でき、4週8閉所も完全達成した。
 「建設業と同じ24年問題に対応した物流施設を無事竣工できてよかった」と五十川所長。北陸BASEは25年1月に本格稼働する予定だ。