建設業法で現場配置が求められる監理技術者などの雇用形態の特例措置「企業集団制度」で、4月から運用する新ルールを活用する動きが出てきた。同制度では連結決算を行う企業グループ内で在籍出向する技術者の配置を特例的に認めている。新ルールでは出向元と出向先の両方が経営事項審査(経審)を受けていても、子会社間を含めた出向社員の配置が可能となり、ゼネコンやハウスメーカーを母体とするグループにも特例活用の道が広がった。地域の建設会社でも特例を生かした受注に乗り出している事例がある。
既存ルールでは親・子会社間の出向社員の配置だけを容認。ペーパーカンパニーを設立し入札機会拡大を狙う制度の悪用を防ぐため、経審の受審は出向元と出向先のどちらか一方に限定している。新ルールでは経審の有無を問わず、親・子会社間、子会社間の出向社員の配置を認める。その代わり出向先での技術習得のため出向後3カ月以降に配置可能という条件を付けた。
新ルール運用前の2023年9月末時点で、国土交通省から同制度の認定を取得したのは建設業で25グループにとどまる。ゼネコンなどは親・子会社ともに経審を受ける場合が多い。子会社の施工会社間の活用も認められず、使い勝手が良くない面があった。新ルールでは事前の認定が不要で、確認書類を用意するだけの簡素な手続きとなり、活用のハードルが大きく下がった。
国交省には地場の企業グループなど、以前より幅広い規模・業種から新ルールの問い合わせがあるという。山形、福島両県の建設会社が経営統合し設立したUNICONホールディングス(HD、仙台市宮城野区、小山剛社長)は新ルールを活用した受注の実績が既にある。子会社が参加した公共工事の入札で、別の子会社から能力・実績がある技術者を出向させ配置した。
特例を活用せずとも子会社間で技術者を転籍(退社・入社)させ配置する方法も可能だが、公共工事で実際の運用は難しい。入札参加にはそれ以前に3カ月以上の雇用関係がある技術者の配置が求められ、転籍では落札できなかった場合のリスクが大きく技術者本人の負担にもなる。同HDは親会社にも技術者を所属させ、新旧ルールをケース・バイ・ケースで併用。「グループ内の技術者を流動的、機動的に動かせ、アドバンテージになっている」(小山社長)。
国交省は25年度以降、各地域の建設業団体に協力依頼し新ルールの活用状況を調査する。制度改善の要望も同時に吸い上げ、品質上の問題の有無などを公共発注者にも確認する予定だ。