◇内閣府SIPと連携
関東地方整備局利根川水系砂防事務所が直轄火山砂防の対象となっている浅間山で、最先端技術を導入した防災の取り組みを展開している。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と連携し、遠隔で操作する降灰調査ロボットなどの社会実装を進め、革新的な土砂災害防止の実現を目指す。10月30日、浅間山中腹にある東京大学地震研究所浅間火山観測所(長野県軽井沢町)で実証実験の様子を公開した。
火山噴火の危険性が高まると火口周辺の立ち入りが規制される。噴火後は降灰による土石流や火山泥流の危険性を調べるため、直ちに降灰量の調査が定められている。ただ危険な立ち入り規制区域内での降灰量調査が必要になるため、ドローンやロボットを使った遠隔での調査手法の確立が急がれている。
内閣府のSIP(第3期、2023~27年度)では、「スマートインフラマネジメントの構築」の1課題として「人力で実施困難な箇所のロボット等による無人自動計測・施工技術開発(火山砂防)」を挙げ、遠隔降灰調査技術の開発に取り組んでいる。開発は工学院大学(羽田靖史准教授)、国際航業らのグループが担当している。
同グループが開発した降灰厚計測計測デバイスは、ドローンにより山中に運ばれ降灰計測後に回収される。同日公開された機体は3号機。23年度の実証実験で使用した2号機はアルミ製だったが、3号機はカーボン製に素材を変更。これにより機体重量を大幅に軽量化(5・5キロから3・8キロに)した。
回転するブラシで灰をかき、3Dカメラで撮影することで降灰厚を計測する仕組みは変更ない。3Dカメラに市販のiPhoneを使うことで操作性が向上し、内部機構も単純化できたという。量産を含めた社会実装を見据え、入手が容易な市販品を多用し、メンテナンス性、耐水性、防じん性を高めた。
同日の実証実験では降灰厚調査に用いる降灰マーカーや降灰スケールのほか、開発中の降灰サンプリングデバイスや可搬型雨量計なども紹介した。これら技術を組み合わせ、噴火後、迅速に火山灰の状況を把握。取得したデータを国土交通省の火山噴火リアルタイムハザードマップに入力し、土石流や火山泥流の危険性をいち早く把握して周辺住民の早期避難につなげるのが狙いだ。
利根川水系砂防事務所では、噴火時の緊急調査を想定した遠隔無人での降灰計画策定を目指している。