4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制への対応も、今回の会合で特に関心を集めた。全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は建設業主要3団体と共に3月から、土日閉所定着に向けた運動を全国で展開。今井会長は各地の会合で「発注者の理解を得ながら働き方改革が進められるよう、業界一丸となって取り組んでいくことが重要だ」と強調した。
時間外労働の削減や週休2日の実現に向けた発注者の対応について、業界側からは改善や指導を求める要望が相次いだ。茨城県建設業協会は「県と市町村では働き方改革に対する認識に大きな違いがある。いまだに週休2日制で発注していない市町村も多い」とし、改善が必要な自治体に対する指導を求めた。同建協は民間工事の対応についても言及。「雨天が続いて作業が滞り工期の延長を発注者に申し出たが、理解を得るのが困難だった」と現場の実態を明かし、民間発注者に対しても働き方改革と週休2日を周知するよう訴えた。
作業環境の改善では、近畿地区で熱中症対策のさらなる強化を要望する声が上がった。直轄工事は2023年度から猛暑日を考慮した工期設定に取り組んでいる。だが「(猛暑日に関する工期の算定基準以下でも)実際は著しく作業効率が低下し、安全管理や健康管理面における影響の増大が懸念される」(近畿地区)との現状があるようだ。サマータイム制の導入や夏季の作業時間の短縮といった働き方の見直しを呼び掛けた。
時間外労働の上限規制を順守するには、生産性のさらなる向上も欠かせない。秋田県建設業協会は「(多くの会員企業が受注している)小規模工事のためにICT建機や測量機器に多額の投資をすることは非効率であり、ICT施工を拡大するには課題も多い」と現状を指摘。中小規模の工事に見合った積算基準の整備や設備投資への助成など、適正な利潤を確保しながら生産性向上の取り組みを後押しする施策を求めた。
現場の人手不足が加速する中、行政が掲げる生産性向上のスケジュールでは間に合わないのではないかという懸念も挙がった。国土交通省は4月、40年度までに省人化3割を目指す「i-Construction2・0」を打ち出した。これに対し島根県建設業協会は「地方の中小建設業者には時間的余裕はなく、即効性のある施策が必須だ」と危機感を示し、「大型ブロックの使用を標準化するなど発注段階での省人化対策を」と訴えた。