「巨大地震の発生リスクが年々高まり、地域住民に不安が広がっている」「現場の実態に即した災害対応策を速やかに導入すべき」--。大規模震災の経験がある地域や、巨大地震による甚大な被害が想定されている地域からは災害対策の強化を求める声が多く上がった。地域防災の柱となる「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」は2025年度で終了する。その後継となる「国土強靱化実施中期計画」の早期策定を全国の建設業が切望している。
「地域住民は津波などの大規模災害対策の充実、とりわけ防災・減災のための施設整備とその早期完成を求めている」。南海トラフ地震の発生時に甚大な津波被害などが想定されている四国地区はそう訴え、実施中期計画の早期策定や四国地区への重点的な予算配分を求めた。
8月に宮崎県の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報」が発表された九州地区は全国建設業協会(全建、今井雅則会長)を介し政府・与党に強い働き掛けを望む事項として、実施中期計画の早期策定を含む3点を決議。熊本県建設業協会の前川浩志会長が全建の今井会長に決議書を手渡した。
担い手不足や働き方改革といったさまざまな課題を解消していくには、地域建設業が存続できる事業量の確保が前提となる。自然災害が頻発し、災害対応に当たる建設業の役割への期待が高まる中、予算を確保し、早期に防災・減災対策を講じることの重要性が年々増している。
今年の会合は一部地区で衆院選と重なった。自民・公明党が過半数を割り込んだ結果に対し、地域建設業からは公共事業の先行きを懸念する声が上がる。政局と他党が提案する政策の行方次第では、予算が大幅に減らされる可能性があるからだ。ある建設業経営者は「地方創生の一丁目一番地は国土強靱化。政局がどうなろうとも国土強靱化という横串を政策に刺して地域を守らないといけない」と強調する。
「2000万円の借り入れができずに倒産している会社があるほど地方は厳しい」と地域建設業の実情を漏らすのは別の業界関係者。「建設会社が地域からいなくなったら日本は成り立たない」と公共事業の先行きに危機感を示す。災害時に地域のために対応する建設業の役割は、政局に左右されるものではない。実施中期計画の早期策定と事業規模に全国の建設業が注目している。
(編集部・熊谷侑子)