改正建設業法で規定された「労務費に関する基準(標準労務費)」の具体的な検討が「鉄筋」「型枠」の2職種で先行的に始まることになった。発注者を含む業界全体で制度運用を議論する中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)が6日開かれ、標準労務費の作成方法の暫定方針で合意。これに基づき職種別に関係する専門工事業団体と元請団体、国土交通省による意見交換の場を近く立ち上げ、標準労務費の素案や、これまで提示された実効性確保策の実現可能性を議論する。=2面に関連記事
職種別の意見交換では標準労務費に基づく見積もりを業界慣行とするために必要な対応と、賃金の支払いへのコミットメントや行き渡り状況の調査への協力を担保する手段も併せて検討する。WGでは契約段階で労務費を確保する新たな法規制の及ぶ範囲にとどまらず、実際に賃金を技能者まで行き渡らせるための具体的な方策が制度運用の実効性確保に不可欠との認識を共有している。職種別の検討成果をWGにフィードバックしながら議論を深めていく。
鉄筋と型枠は各専門工事業団体の検討体制などを踏まえ先行職種に位置付けた。ほかの職種も準備が整い次第、検討を順次開始する。ただし一人親方が多く個人の発注者が多いなど特殊性を抱える「住宅分野」は関係団体と協力し、前もって制度運用の課題を洗い出す方針だ。
6日のWGでは意見交換に入る前段階として作成方法の暫定方針を固めた。標準労務費を「労務単価×歩掛かり」の計算式で単位施工量当たりの金額として示し、その際に公共工事設計労務単価や国交省直轄工事で用いる歩掛かりを適用することを委員間で大筋合意した。
建設業団体からは留意点として、設計労務単価が過去の実績値であり、歩掛かりも施工条件に左右されるため適切な補正対応が必要との指摘があった。
学識者の1人は、ある現場の事例として労務単価が低いのに歩掛かりが高いため、その掛け算の結果が標準労務費に照らして問題なくとも「実際に支払われている労務単価は著しく低い状況が起きている」と指摘。これを問題視せずに対応しなければ、技能者の処遇改善という法制度の趣旨に合わないと主張した。国交省は掛け算の内訳を確認するような対応策などを次回以降の会合までに検討する考えを示した。