三内丸山遺跡(青森市)の発見は、縄文時代に対する歴史観や文化観を大きく変えたと言われる。1994年に遺跡の保存が決まり、今年で30周年となる▼縄文時代前期~中期(紀元前約3900~2200年)の大規模な集落跡で、1992年からの青森県運動公園整備事業に伴う発掘調査で見つかった。調査開始2年後の94年、後に縄文タワーと称される大型掘立柱建物跡が出土し大きな注目を集める▼このタワーが何のために造られたのかは分かっていない。諸説ある中で、海洋史と土木史を研究する長野正孝氏(元国土交通省港湾技術研究所部長)が立てた仮説は「狼煙(のろし)台」。著書『古代史のテクノロジー 日本の基礎はこうしてつくられた』で築造当時の建て方や必要な人員、工期なども考察している▼縄文ブームが巻き起こるなど古代史に関心を持つ人は多い。調査研究でどのようなことが解明されるかに興味は尽きないが、自分なりに想像して古代の謎に迫るのも楽しい▼三内丸山遺跡では発掘調査が毎年行われている。これからも新たな発見が期待され、縄文人たちの暮らしにまた少し近づけるかもしれない。