鹿島は溶接量が多い大型鉄骨柱を対象に、柱の全周溶接に伴う一連の繰り返し作業を全自動化する新型の「マニピュレータ(多関節型アーム)型現場溶接ロボット」を開発した。開発済みの溶接ロボットに「開先センシング機能」と「スラグ除去機能」を実装。柱溶接部の開先形状を自動で計測し、結果に応じた溶接条件(積層数、溶接パス数、溶接速度など)を自動生成する。スラグ除去の手作業もゼロになり生産性向上につながる。
新型ロボットは、▽開先形状計測▽溶接▽スラグ除去-の一連作業を全自動で繰り返すため昼夜連続作業が可能となる。技能者が作業中のロボットから離れ、同時に複数台のロボットを運用するなど他の作業も行える。柱周囲に設置した走行レール上を6軸マニピュレーターが移動しながら、柱全周を8ブロックに分けて自動溶接。マニピュレーターにはツールチェンジャー機能を実装しており、溶接ツールとスラグ除去ツールを自動で持ち替えながら作業し、柱1本の全自動溶接を実現する。
ロボット運用の安全対策に加え、雨風を防いで溶接品質を確保するためのユニット養生設備や、ロボットを移設するための運搬設備、走行レールの分割機構も併せて改良。ロボット運用で発生する作業を大幅に効率化した。
横浜市内で施工中のビル工事現場で、一部の大型鉄骨柱の溶接に新型ロボットを実導入した。超音波探傷検査や外観検査で熟練技能者と同等以上の高い品質を確保しながら、柱1本の全自動溶接を実現できることを確認した。
鹿島は今後、新型ロボットによる溶接時間の短縮などを行うとともに、厚板や超大型鉄骨柱、狭開先などにも対応できるよう一層の機能向上を図る。技能者が複数の溶接ロボットを並行運用できる体制を確立することで、鉄骨柱の現場溶接作業のさらなる省人化と生産性向上を目指す。