回転窓/モラルある経済成長を

2024年11月13日 論説・コラム [1面]

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 ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選に関連し、物価高の止まらない米国でホームレスが急増している実態が相次ぎ報道された。ほぼ右肩上がりで成長してきた米経済の裏側に広がる巨大な影が透けて見える▼日本にとっても対岸の火事ではない。バブル期のような高水準で推移する株価とは裏腹に景気回復の実感は乏しい。物価高に追い付かない賃上げや社会保険料の増加、将来の生活不安などが要因だろう▼物価高は企業経営も直撃している。東京商工リサーチが11日発表した統計では、物価高を起因とした10月の企業倒産発生件数が45件。うち建設業は産業別で最多となる12件に上る。同社は不安定な為替推移の中で増勢に転じる可能性も指摘する▼与党が過半数割れした衆議院選挙では、裏金問題に伴う非公認候補者の政党支部などに活動費を渡した、いわゆる「2000万円問題」が一般感覚とのずれを浮き彫りに。これが議席の大幅減に追い打ちをかけた▼市場経済で成果主義を否定できないが、過度な格差は分断や対立を招く。国の成長・発展を目指すリーダーには一定のモラルを守り、秩序を保つ責務がある。