国交省/耐震診断義務付け建築物、民間で対応停滞/地域の主体的対策促す方向に

2024年11月19日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は不特定多数が利用する大規模建築物や災害時の緊急輸送道路に面する建築物など、耐震診断が義務付けられている建築物の耐震化の進捗状況を把握する指標・目標を見直す。緊急輸送道路など避難路沿道の建築物は民間物件のウエートが大きいことから耐震化が停滞しており、2025年以降は都道府県別の指標・目標を併せて設定する方向。地域の実情をきめ細かにフォローすることで地方自治体の主体的で効果的な取り組みを促す。
 耐震診断義務付け建築物の24年3月末時点の耐震化率は、全国一律の基準で大規模な病院や店舗などを対象とする「要緊急安全確認大規模建築物」が92・5%に達する。一方、都道府県か市町村が耐震化の対象とする建築物・道路を指定した上で規制する「要安全確認計画記載建築物」は、庁舎や避難所など主に公共施設が対象の「防災拠点建築物」が72・8%、緊急輸送道路などに面する「避難路沿道建築物」は36・2%にとどまる。
 新たな指標は耐震性不足の解消を主眼に置き、耐震改修だけでなく除却や建て替えも評価可能な率算定の方法に切り替える方針。自治体の指定が前提となる指標は、率算定の際に母数となる対象棟数も順次増えてしまい評価が難しいため、今後は耐震性不足を解消した棟数などをフォローしていく。避難路の指定も含め、自治体の積極的な取り組みが適切に評価される指標にする狙いがある。
 耐震化の取り組み状況は地域ごとにバラツキがある。4月時点で避難路を指定している自治体は22都道府県、71市町村で、そもそも未指定の自治体も多い。新たな指標・目標について議論した18日の有識者会議で、国交省は指定道路ごとの耐震化状況を地図上に色分けして公表している東京都などの例を挙げ、こうした取り組みを他自治体にも水平展開していく意向を示した。学識者や建築専門家からも、都道府県別の指標・目標設定や地図などを用いた取り組み状況の「見える化」が各自治体の意識向上につながり効果的とする意見があった。
 要緊急安全確認大規模建築物は30年までに耐震性不足をほぼ解消する目標を新たに設定する方針。