文科省有識者会議/国立大学病院施設整備、再開発・財源の新たな方向性提示へ

2024年11月20日 行政・団体 [1面]

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 国立大学法人等施設の整備の在り方を検討している文部科学省の有識者会議は、国立大学病院の再開発や改修の新しい方向性を打ち出す。老朽化が急速に進行する中、物価上昇や旺盛な建設需要から工事契約が成立しにくくなっている。経営上の収支が厳しく、国の支援とともに地方自治体との連携や外部資金の活用を求める意見も出ており、多様な財源を活用するような方向で今後の対応を示す見通しだ。
 「今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」(主査・西尾章治郎大阪大学総長)が19日、会合を開いた。2028年度からの第6次国立大学法人等施設整備計画策定に向けた中間まとめを24年度末に策定する。同日は病院施設整備の課題や対策、大学を防災や人材育成に関する地域との共創拠点にしていくための考え方を議論。中間まとめには、病院施設を含めた再開発の取り組みを列記する方針で一致した。
 会合では、塩崎英司委員(国立大学病院長会議理事・事務局長)が国立大学病院の課題を報告した。それによると国立大学病院は、コロナ補助金の廃止と人件費の増加などから全体ベースで23年度に法人化後初の赤字となった。借入金返済で建物の更新を抑制した結果、23年度は建物の価値残存率が42・9%に低下した。12年度の価値残存率(66・5%)を維持するには取得価格ベースで3315億円が不足している。
 施設整備は20年以降の再開発の場合、1平方メートル当たり55・5万円の水準でも落札されてきたが、24年は入札不調、延期が出た。公的な病院は事業10件の平均で24年は同84・3万円で応札されたが、4件が不調、3件が予算見直しとなった。同90万円でも落札が難しいとされ、会合では「再開発できるかが大きな論点」との指摘が委員から出た。
 塩崎委員は財政支援とともに、改修による継続使用や、機能を分けた施設整備の必要性を強調した。
 大学一般施設の整備は、同会議傘下のワーキングが別に検討中。25年1月には中間まとめの素案が提示される予定で行方が注目される。