東京湾に面した海岸に、今年も収穫したばかりの大根が並び始めた。緑と白のカーテンが重なるように見え、地域の冬の風物詩として知られる▼大根干しが最盛期を迎えるのは12月から。近くの農園が風通しのいい砂浜で1週間ほど干した後、ぬかに入れ、浅漬けのたくあんとして販売する。低カロリーでビタミンが豊富な大根は葉もミネラルが多く、捨てるところのない食材と言われる▼海岸の先には毎週日曜の朝市が人気の漁港がある。新鮮な魚介類のほか、地元産の野菜や果物も並び、早朝から多くの人でにぎわう。年末にかけてあら汁を先着順で無料配布する日も▼風光明媚(めいび)な漁港でもあり、過去には集客力を高めようと官民連携の再開発が計画された。残置物や空き地の扱いなどが問題となり、漁港側の合意形成が進まず計画は頓挫したまま。近年のにぎわいを受け、開発機運が再び高まってきたと聞いた▼多くの地域で今週から寒さが増し、周囲の景色も冬へと足早に移り変わる。先日訪れた漁港の朝市では、寒風で干されたたくあんが早速売られていた。今ある良さを残しつつ魅力が高まる再開発を願う。