能登半島地震の教訓を生かした災害対策の在り方を検討してきた中央防災会議の有識者ワーキンググループ(WG)は26日、国への提言となる報告書をまとめ、坂井学防災担当相に提出した。住宅・建築物の耐震化やインフラの強靱化・機能強化を求めるとともに、道路の啓開・復旧を権限代行で国が機動的に支援するなど、平時と被災後を含めた対応を列挙。懸念される南海トラフ、首都直下の地震対策に生かすよう提案した。
「2024年能登半島地震を踏まえた災害対応検討WG」(主査・福和伸夫名古屋大学名誉教授)が提言を検討した。WGでは建設関係団体や建築家も意見を発表した。それを踏まえ報告書は災害対応の方向性に▽防災DXの加速・新技術等の活用推進▽応急対応・応援体制の強化▽事前の防災や復興準備、復旧・復興の推進-などを挙げた。
分野ごとに、RC建築物の傾斜・転倒被害の原因分析と基礎の設計方法の周知、国が全体調整を担いつつ公的主体も活用する上下水道一体の支援体制の構築、緊急輸送道路にある約10メートル以上の高盛り土の点検・対策、災害調査のオートメーション化などを提案した。
報告書の手交後、福和主査は耐震化に関し「経済合理性でコストを下げるのと、安全なビル、家とでは相反するところがある。社会の安全レベルをどのくらいにすべきか考えることを学べた」と指摘し、必要な対策の検討を求めた。
報告書の要旨は次の通り。
【今後の災害対応の基本方針】
〈人的・物的被害への対応〉
▽住宅・建築物の耐震化の一層の推進
▽上下水道、通信、道路、港湾等のインフラ・ライフラインの強靱化・耐震化・早期復旧の推進
〈国・地方公共団体等の災害応急対応〉
▽内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で強化
▽国による応援組織の機能の在り方を検討(テックフォースなど)
〈被災者支援〉
▽場所(避難所)の支援から人(避難者等)の支援へ考え方を転換
▽学校体育館の空調設備設置、トイレ洋式化、バリアフリー
▽公共工事の「快適トイレ」を標準化、災害時の調達環境の整備
〈物資調達・輸送〉
▽市町村による避難生活に必要な物資などの十分な備蓄
〈住まいの確保・まちづくり〉
▽公費解体、災害廃棄物処理のマニュアルなどの見直し
▽復興事前準備や事前防災・まちづくりの推進
▽上下水道の復旧・整備は、復興まちづくり、将来の人口動態などから総合的に判断
〈多様な主体の連携等による支援体制の強化〉
▽インフラ復旧工事従事者などの宿泊場所、活動拠点の在り方の検討
▽自治体と民間団体の協定推進、検証・見直し
〈特徴的な災害を踏まえた対応〉
▽民間ドローンの積極活用
〈引き続き検討・取り組む事項〉
▽総力戦で臨む体制、連携の在り方の検討
▽有効な新技術、方策の活用。