建コン協東北/24年度意見交換会を振り返る・上、魅力ある業界へ環境整備

2024年11月27日 行政・団体 [6面]

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 ◇業務平準化は継続対応必要
 建設コンサルタンツ協会(建コン協)東北支部(菅原稔郎支部長)が東北地方整備局や6県、仙台市と開いていた意見交換会が19日の岩手県で全日程を終えた。建コン業界が「喫緊の課題」に挙げる働き方改革や将来の担い手確保・育成を巡り、官民が組織の垣根を越えて対応を議論。建コン各社が今後も社会的使命を果たし続けるには、業界の自助努力だけでなく公共発注機関の理解と協力が欠かせないと訴えた。次代を担う人材に選ばれるための変革に必要な方策は何か--。意見交換での議論と成果を振り返る。

 本年度の意見交換は豪雨災害の対応で書面開催になった山形県を除き対面実施した。テーマは▽担い手の確保・育成のための環境整備▽技術力による選定▽品質の確保・向上▽受発注者協働による災害対応に向けた継続的な環境改善▽DX推進の環境整備-の5本柱。各県の動向を踏まえつつ、同支部の幹部は業界の要望と提案を伝えた。
 コンサル業務の発注額はここ数年、横ばいで推移する。ただ技術者単価の引き上げに物価上昇などが加わり、「実質的な事業量は目減りしている」状況にある。東北整備局との会合で同支部は「3%の賃上げ目標を達成するためにも安定した仕事量と全体予算の確保が必要」と強く訴えた。策定中の国土強靱化実施中期計画が予算確保の重要な裏付けになるため、東北整備局は業界の声を積極的に発信する姿勢を求めつつ、「事業量の確保に努める」姿勢を示した。
 建コン業界が公共発注機関に繰り返し訴えているのは、依然として年度末に偏っている履行期限(納期)の平準化や必要な標準履行期間の確保だ。菅原支部長は各地の意見交換で「いまだに3月に納期が集中している」と指摘。単年度予算の弊害が解消できなければ働き方改革に深刻な影響を及ぼし続けると警鐘を鳴らした。岩手県のように3月末納期の解消に力を入れる自治体もあり、同支部は最重要課題の一つとして事態の改善を求めていく。
 少子高齢化が進行する日本の中でも、東北地方は特に人口減少率の高い地域になっている。産業間、企業間の人材獲得競争は熾烈(しれつ)を極める。若手・女性技術者をしっかりと育て活躍の場を広げる取り組みを具体化し、実行していくことに猶予はない。方策の一つとして、同支部は意見交換で若手技術者らを対象にした表彰制度の創設や拡充を提案。「仕事へのモチベーションを高めることは結果的に業務品質の向上にもつながる」と見る。
 頻発する大規模自然災害への対応も意見交換の大きなテーマになった。能登半島地震や秋田、山形両県で発生した豪雨災害などを挙げ、菅原支部長は「多数の会員が復旧・復興に向けて尽力している」と強調した。同支部は災害協定の不備や改善点をしっかり洗い出し、手続きやコスト負担で実態に合わせた対応を求めながら、仙台市に災害協定の締結を要望。制度や環境の整備が結果的に被災地、被災者にしっかり寄り添う第一歩になると見ている。