中学生の時に地元の盛岡市で東日本大震災に遭遇した。鮮明に覚えているのは地震後、数年で堤防や道路などが再び整備された被災地の姿だ。「あんな大きなインフラが元に戻るんだ」と、テレビの映像にくぎ付けになった。防災・減災やまちづくりに興味を持つきっかけになった。
規模の大きなインフラ事業をやってみたいと東京都に入庁。携わった業務に対し、充実感や達成感だけでなく悔しい思いもしてきた。2年目に担当した下水道管の更新工事がそれだ。工事監督として現場近くの住民に工事内容などを説明したものの着工の同意が得られず、工事を止めざるを得なかった。
その後異動があり、後ろ髪を引かれる思いで部署を離れた。異動先では雨水専用管の設計がメインだが、住民との交渉役なども担った。管路の敷設工事では、資材を仮置きするため民地を借りる必要があった。借りられなければ工事の中断は確実だった。
前の部署での経験を踏まえ、地主にはより丁寧に話した。「今までは目先の説明ばかりしていた。事業がなぜ必要なのかなど、より俯瞰(ふかん)して説明するよう心掛けた」。1回目の交渉でほぼ了解を得た。
「最後まで諦めずに粘り強く取り組むこと」を心に留め、業務に当たっている。これまでさまざまな部署を経験し、必要な知識が増えてきた。今後は「周りをフォローできるようになりたい」と前を向く。
東京都下水道局建設部土木設計課(うつぎさわ・ななこ)