近畿地方の自治体では公共用地取得業務を担当する職員の減少が続き、全国平均の減少率を1ポイント上回るペースで進行している。近畿地方整備局の調べによると、近畿管内での市町村の用地職員数は2010年度の383人から23年度には321人へと約16%減少(全国平均約15%減少)した。加えて、これら団体の7割近くが用地職員を確保できていないという厳しい実態が浮き彫りになった。
調査では三重県を含む近畿2府6県の市町村240団体(政令市除く)の用地職員数を集計した。10~23年度の推移を見ると、14年度に312人と大幅に減少した。その後は増減を繰り返しているが、23年度現在も10年度比で減少が続いている=グラフ参照。用地職員が「ゼロ人」の自治体は20年度時点で161団体(67・1%)に上り、「1~2人」が31団体(12・9%)と続く。10人以上いる自治体はわずか5団体(2・1%)にとどまった。
近畿整備局の中見大志用地部長は「担当職員がいない、あるいは1~2人しかいない団体が多数を占めている。このままでは用地取得業務の遂行に大きな支障を来す恐れがある」と懸念を示す。用地取得が滞れば公共事業が進まず、地域の経済や人々の生活に重大な影響を及ぼしかねない。
とはいえ、少子化で全体の職員数が減少傾向にある中、抜本的な対策を講じられないままいる自治体は少なくない。一方で用地取得事務を負担と感じている自治体に対するアンケートでは、その理由として「マンパワー不足」のほかに「業務量の増加」を挙げる団体が多かった。全国的な傾向でもあるが、近年の災害復旧事業や所有者不明土地の増加が現場の負担をさらに深刻なものにしている。
中見部長は「団体ごとに異なる課題があるが、共通するのは『人員不足』と『専門性の欠如』だ。自治体単独での解決は難しいだろう。社会情勢の変化にも対応しつつ、サポート体制を充実、強化しなければならない」と言及する。
近畿整備局は24年度に国の機関や府県、政令市、関係士業団体で構成する「近畿地区土地政策推進連携協議会」の下に全国初となる「府県別意見交換会」を設置し、地域ごとの課題を共有する取り組みを始めた。
9月に初会合を開いた大阪府の意見交換会では、都市部特有の所有者不明土地の効率的な活用や公共用地取得体制の強化で意見を交わした。和歌山県では災害対応力向上を目的とした地籍調査の推進などがテーマとなった。さらに京都府では都市部と山村部の特性に応じた地積調査方法が検討されるなど、地域の実情に即した議論が進んでいる。
意見交換の成果は24年度中に整理し、25年度以降の深掘りにつなげるという。自治体が直面する課題の解決へ、全国の先行事例として、実効性のある改善策をどのように具体化していくかが注目される。