大林組と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、慶応大学の3者は2日、山岳トンネルの「自動火薬装填(そうてん)システム」を現場で実証し、遠隔での発破に成功したと発表した。触覚を再現する技術を活用し、切羽から320メートル離れた遠隔地で火薬を装填、発破できることを確認した。今後は一連の作業を自律化する技術も開発し、安全性と生産性の向上につなげる。2026年度の本格実装を目指す。
慶大が開発した「リアルハプティクス」という技術を活用する。同技術は、現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送。物体に触った時に感じる硬さや柔らかさを遠隔操作しているオペレーターの手元で再現する。ロボットアームで柔らかいものをつぶさずにつかめるなど、繊細な作業を可能にする。
火薬は強く握ったり、押し込みすぎたりすると暴発する危険性があり、人による作業が中心だ。リアルハプティクスによる接触情報を生かし、ロボットでも火薬の装填に対応できるようにした。作業員が切羽位置のカメラ映像を基にリモコンを操作し、火薬の装填、発破までを遠隔地から完了。落石などによる事故リスクを減らす効果が期待できるとしている。
大林組は、国土交通省中部地方整備局から受注した「令和4年度三遠南信6号トンネル工事」の現場で同技術の実証実験を行った。切羽から320メートル離れたトンネル坑外から火薬を装填し、発破することに成功した。
ロボットを火薬の供給装置とも連動させ、紙巻きや粒状など複数の種類に対応できることも確認した。
作業員はカメラ映像だけでなく、触覚でも現地状況を把握できる。大林組担当者は「映像で距離感がつかめなくなった際に、触覚がカメラを補填してくれることが分かった」と話す。
今後は一連の作業の自律化を目指す。火薬を入れる穴の位置をカメラで検知し、装填作業を自律化する技術は開発済みで、現場実装に向けた試験を重ねている。将来的には大型重機の自動運転との連携や、火薬の脚線結線作業の自動化も視野に入れる。