北海道建設部は、2023年度に試行したICT活用モデル工事の受注者アンケート結果をまとめた。作業の各段階で要した日数や人工数の定量的評価は、工事全般の平均値で従来施工より36%削減され、施工の効率化や労力の軽減などの効果が認められた。一方、未実施の理由では機器調達の費用増加や技術者の確保を課題に挙げる意見が多く、費用助成制度の導入・拡大を求める声が多くなっている。
同部では、国によるi-Constructionの取り組みの加速などを踏まえ、17年2月に「建設現場のICT活用に関する北海道の取組方針」を策定し、18年度から施工前を含めた建設生産プロセスの5段階でICT施工を活用する全面的なICT活用工事を試行導入した。22年度からは一部プロセスでの活用を可能とする部分的なICT活用工事、23年度には設計データ作成と出来形管理・納品に特化した簡易的なICT活用工事を導入し、取り組みを拡大していた。
今回のアンケートは23年度内に完成したICTモデル工事の受注者を対象に実施し、34件の回答を得た。回答者のうちICT施工を実施したのは18件、未実施が16件だった。
調査結果を見ると、実施工事18件はすべて土工(道路・河川・砂防)で舗装はゼロ。使用したICT建設機械はマシンガイダンス(MG)バックホウが14件、マシンコントロール(MC)バックホウが7件、MCブルドーザーが1件だった。活用計測技術はUAV(無人航空機)が11件、レーザースキャナー(LS)が5件などとなった。
定量的評価では、各段階(事前準備段階、施工段階、提出書類作成段階)でICT施工で要した日数と主作業員数、補助作業員数を、従来施工と比較。屋内作業(内業)時と屋外作業(外業)時に分けて集計した。
内業の事前準備段階で日数が31%増、主作業員が32%増となったほかは、内業、外業ともすべての段階で日数、主作業員、補助作業員のすべてが従来施工より削減された。
内業では補助作業員の人工が事前準備段階で51%減、施工段階で77%減、提出書類作成段階で50%減とすべての段階で半減した。
外業では事前準備段階で日数が38%減、主作業員が53%減、補助作業員が49%減。施工段階で日数が34%減、主作業員が46%減、補助作業員が45%減とすべての工程で日数、人工とも縮減している。
日数と人工を合わせた平均値は内業が43%減、外業が28%減、全体平均は36%減となった。ICT活用工事のメリット(複数回答)については全18工事が「作業効率の向上」と回答し、そのほかにも施工精度の向上や安全性の向上などが挙げられた。
一方、未実施者に聞いた未実施の理由では「重機や機器のレンタル費用などでコストが増加する」が7件、「3Dデータ作成者やオペレーターなどの技術者が確保できない」が6件と上位を占める。今後の普及に必要なことの質問でも「機器類の調達に係る費用助成制度の導入・拡大」が14件、「人材育成に係る費用助成制度の導入・拡大」が10件となっており、機器調達のコストと技術者不足に課題がある結果となった。