関東地方整備局が国土形成計画法に基づく国土利用と整備、保全を目的とした次期「首都圏広域地方計画」の中間取りまとめの素案を明らかにした。2050年を見据え、東京圏内外へのイノベーション誘致、水害を含む激甚災害への備えとして流域治水対策を推進。多様な暮らしや働き方改革が可能な国土形成を目指す。計画期間はおおむね10年を想定する。年内に同素案を公表する予定だ。
素案は「首都圏広域地方計画に関する有識者懇談会」(座長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)が前橋市の臨江閣で開いた第15回会合=写真=で示した。
計画では▽世界の中での我が国の地位低下▽エネルギー・食料確保のリスクと生態系への影響▽都市への集中と集積に伴う巨大災害のリスク▽少子化の深刻化・人口の地域偏在-の四つを直面する課題に設定した。
直面する課題に対する将来目標では、政治や経済の中枢機能が集積する「首都圏の強みを生かすこと」や「強くしなやかな国土形成の実現」を挙げた。エネルギーや食料危機に備える「グリーン・メトロポリス」、多様で豊かな暮らしができる「寛容な地域の創造」も目指す。
直面する危機を解決する施策として、首都圏へのイノベーション誘致やインフラを核に他都市が結びつく「日本中央回廊」を形成する。国土強靱化に向けた流域治水プロジェクトの加速、巨大災害から首都機能を守る拠点も整備し国民の生命と財産を守る。クリーンエネルギーへの転換や食料自給率の向上、子どもを安心して産み育てられる環境づくりも推進する。
これら施策は広域圏をカバーするインフラの充実・強化、生成AIやデジタルツインなどのDXによって実現する。次期計画を通じて多様な暮らしや働き方改革につなげる。
有識者懇談会では素案を踏まえ、各委員が討論。「首都圏の競争力を評価する仕組みを盛り込むべき」や「ビジネスとして民間企業が緑化に取り組めるようPark-PFI(公募設置管理制度)などの事例を発信してはどうか」などの意見が寄せられた。
家田座長は「人口数万人の自治体や災害時に道路啓開などに対応してくれる中小零細の建設会社企業はDXどころではない」と指摘。「DXを実現するための体制整備や支援する仕組みが必要」と助言した。