関東1都8県の建設業協会と関東地方整備局の意見交換会が、16日に全日程を終えた。時間外労働の罰則付き上限規制の適用開始後初めての意見交換会では、週休2日制工事の導入など働き方改革の実現や処遇改善を巡る議論が熱を帯びた。地域の守り手となる建設業は深刻な人手不足に陥っている。窮状を訴える業界団体に対し、整備局は官民一体で担い手確保に取り組むことの重要性を強調した。
意見交換会では第3次担い手3法を踏まえ、入札契約制度の在り方や適正工期の設定などをテーマに意見を交わした。岩崎福久局長は、担い手確保・育成を図るには「生産性向上と働き方改革」をセットで議論することが欠かせないと各所で訴えた。
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2024年度の意見交換では、週休2日への取り組みが進んでいない市町村や民間発注者への対応について議論が集中した。埼玉県建設業協会(小川貢三郎会長)や茨城県建設業協会(石津健光会長)らは、整備局や県が適正工期の設定を指導・啓発するよう要望。「商工会議所連合会への周知を通じて民間発注者に理解を促している」(整備局)、「未実施の市町村へ職員を派遣し協力を要請している」(県)と報告した。
建設業の就労環境と処遇改善を求める声も相次いだ。栃木県建設業協会(谷黒克守会長)は直轄土木工事で「暑さ指数(WBGT)が31以上になった時間」を基に作業不能日数を算定している現行制度の改善を提案。神奈川県建設業協会(渡邉一郎会長)も直轄工事での工期延長日数に応じた増加費用の計上などを訴えた。岩崎局長は「他産業と遜色のない処遇や環境に改善していかなければ業界に人は来ない」と指摘。新規入職者拡大へ「アクションを起こす」と表明した。
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価格高騰への影響を懸念する声も多数寄せられた。長野県建設業協会(木下修会長)と東京建設業協会(乘京正弘会長)は、スライド条項の適用で契約変更が生じた際の受注者負担割合(残工事費の1~1・5%)の見直しも要望した。整備局は、物価上昇・下落の両局面で適用件数が増加した場合に「事務手続きの増大」と「下落局面で受注者の負担を求める可能性がある」と指摘。ただ業界の生の声を「(国土交通)本省に伝える」ことで環境改善を目指すとした。
生産性向上への取り組みでは神奈川建協と埼玉建協が、ICT施工や情報共有システム(ASP)の導入拡大に向けた支援を求めた。整備局は「導入経費の補助金制度、講習会やウェブセミナー、ICT経営セミナー」の活用を呼び掛けた。
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各県独自の課題と要望が挙がった会合も多かった。群馬県建設業協会(青柳剛会長)は資材の価格高騰といった「恐れ(リスク)情報」の契約前通知に関連し、現場の意見を聞きながら協議の在り方などのガイドラインを議論するよう要請した。整備局は「現場や地域の意見を聞きながら検討する」と答えた。
千葉県建設業協会(石井良典会長)は県が策定した「道路啓開計画」を巡り、「災害に対する行政側の新たな横連携の仕組みを考えるべき」と主張。整備局は「非常に重要な問題提起だ。房総半島を対象にした震災シミュレーションの中で検討していく」と応じた。
「若者向けPR動画制作のノウハウがない事業者が多い」と訴えたのは山梨県建設業協会(浅野正一会長)。動画制作の外注などに活用可能な補助・助成制度を求め、整備局も「制度創設の要望は本省に伝える」と答えた。