◇魚と野菜の育成契機に入職促す
人手が不足している建設現場に、これまでと目線を変えて人材を取り込む動きが出てきた。総務省の調査では職に就いていない若者が全国で70万人を超える。こうした層を入職につなげようと建設業の訓練団体が、野菜や魚の育成から建設業に興味を持ってもらう訓練を提案している。高校生などが学校以外の場との2拠点で建設業を学ぶ環境も整えた。多様なバックグラウンドの働き手が輝ける建設業界へ--。その挑戦を追った。
建設業の職業訓練機関12団体でつくる全国建設関係訓練校等連絡会議(桑原敏彦会長)が、ニートやひきこもりの当事者など働くことに悩みを抱える若者の就労を支援する「地域若者サポートステーション」と連携。初会合を11月27日に群馬県沼田市で開いた。
桑原会長が校長を務める職業訓練校の利根沼田テクノアカデミーが、「マイルド・ソフト・トレーニング」と呼ぶ職業訓練を提案した。負荷の少ない仕事を体験してもらい、それを取っかかりに建設業への入職を促すのが狙い。同アカデミーは、魚と野菜を同時に育てる「アクアポニックス(アクポニ)」を訓練プログラムとして用意した。
廃校を拠点とする同アカデミーでは、廃プールを改修してテラピアを飼育。ふん由来の栄養を肥料にして、水耕栽培でレタスと小松菜を育てている。アクポニが軌道に乗るまでは、水質悪化で200匹のテラピアが死ぬなど試行錯誤の日々だった。水を殺菌する装置や、発芽を促すLEDライトを設置するなど工夫を重ね、現在の設備が完成した。2025年1月からアクポニ研修の訓練生を募り、同4月に訓練を始める。
装置や訓練プログラムの参考にしたのは、同アカデミーの菅原直樹講師が社長を務める菅原設備(愛知県津島市)の農園「つなぐファーム」だ。障害がある社員が定植や栽培、収穫、販売などのフローに参画しており「さまざまな作業を体験する中で、一人一人の適性がある作業を見極められる」と菅原氏は話す。
ニートやひきこもりの当事者は、過去の体験から心に傷を負い、精神疾患を抱えているケースが少なくない。菅原氏は、自然や農作業が心を癒やす「アグリヒーリング」の効果に着目。「『コミュニケーションが苦手』『人が怖い』といった不安を解消し、就労への自信につなげられれば」と研修に期待を込める。
アクポニの循環装置は水道設備の技術を応用している。「設備に触れるところから、徐々に建設業に興味を持ってもらいたい」と桑原会長。研修内容をブラッシュアップするため、就労支援の専門家の意見も取り入れていく。