◇自由な議論で魅力向上へ
「建設業に行く人は普通じゃないイメージ」「テレビCMを頑張ってるけど、まずテレビを見ないよね」--。そんな本音を、山あいの夜更けに若者たちがぶつけ合った。利根沼田テクノアカデミー(群馬県沼田市)は、高専生や高校生への担い手確保の活動にも注力。都市部と山間地域で林業などを経験してもらう「2拠点教育」を実施した。学生らは体験を元に議論。国土交通省の若手職員を交えたディスカッションも行った。
11月16、17日に沼田市で行った2拠点教育には、豊田工業高等専門学校(豊田高専、愛知県豊田市)と葛西工科高校(東京都江戸川区)から9人が参加した。16日は杉林で伐倒作業を見学。バーベキューで親睦を深め、たき火を囲んで林業を含む建設業への入職促進について議論した。
ある学生は、大手ゼネコンがテレビCMに力を入れていることを挙げ「(私たちの世代は)あまりテレビを見ない」とミスマッチを指摘。「原宿や渋谷の大きなモニターやTikTok(ティックトック)で、頭に残るフレーズで訴えるのがいい」と提案した生徒もいた。ある生徒は「高校の学科を『普通科』『建築科』と分けるのが良くない。建設業の人は普通でないイメージを植え付けてしまう」と話した。
豊田高専の学生は17日の午前8時から、国交省入省3年目で国土政策局地方政策課の深堀貴良氏を講師にディスカッション。同省の2地域居住施策を踏まえ、豊田市と沼田市での2地域居住の実現可能性について話し合った。
学生たちは交通費などの点で難しいとしつつも、乗り合いバスやシェアハウスの活用を提案。深堀氏は「乗り合いバスの発想はなかった」と感嘆。空き家を改修したシェアハウスの画像を見た学生は「行政の考えるシェアハウスと、私たちが住みたいそれとは違う」とばっさり。年間50万人の観光客を受け入れる香川県三豊市の事例を参考に、ニーズを的確に捉える重要性を語った学生もいた。
続いて、両校の学生らは木材工場での製材作業を見学。職人の指導で木製藤棚の組み立て作業を行った。藤棚は葛西工科高校の校内に設置する。来年度は職人を高校に招き、木材を使った小屋をつくる。
同アカデミーの花坂弘之講師は「建築や土木のDXは、現実のものをデジタルでフィードバックする『デジタルツイン』だ。学校と違う拠点での実地の学びが大切になる」と語る。2拠点教育は2025年度に都内の建築・土木科がある高校、26年度は関東圏などに対象を広げ展開していく。