◇国交・厚労・文科の3省連携で推進へ
さまざまな事情で就労から遠ざかっている若者を建設業へ呼び込む--。全国建設関係訓練校等連絡会議の桑原敏彦会長は、魚と野菜を同時に育てるアクアポニックス(アクポニ)をきっかけに入職を促す活動を始める。自身が率いる職業訓練校の利根沼田テクノアカデミー(群馬県沼田市)では高校生などへの2拠点教育も推進する。こうした活動に加え、複数の省庁にも働き掛け、担い手の間口を広げようとしている。
桑原会長は、来年4月に始めるアクポニ研修を「ゆるやかな訓練で自分の価値を再認識し、『社会に出て大丈夫なんだ』と思える場にしたい」と話す。
同アカデミーは、研修生のディスカッションで「意見を否定せず、相手と自分の価値をともに認める」ことを重んじる。こうした考えが、負荷の少ない作業で成功体験を積み肯定感を高める「マイルド・ソフト・トレーニング」の根底にある。訓練生向けにコンテナハウスの組み立て研修も行っており、これもニートの職業訓練に活用したい考えだ。
学校に行けない子どもたちが通うフリースクールとの連携も模索する。桑原会長は「学校以外のところで学ぶフリースクールは、2拠点教育と同じ方向性」と見て、「オンデマンドで互換単位認定をできるようにしたい」と展望する。
取り組みを加速するには、関係省庁との関係構築も欠かせない。11月16、17日に行った2拠点教育には国土交通省職員が初めて講師として参加。建設業振興基金(振興基金)が150万円を助成した。
同27日のサポートステーション連携会議は同省と厚生労働省、振興基金から担当者が出席した。2拠点教育やフリースクールに関連した動きは、文部科学省の所管分野と重なる。国交、厚労、文科の3省をつなぐのは「政治の力」(桑原会長)。同連絡会議は国会議員などと勉強会を開いており、3省の担当者も参加している。
全国への波及も狙う。元厚労事務次官の村木厚子氏が代表となり、若者支援の全国組織「子ども・若者支援全国ネットワーク」を年度内に立ち上げる予定。同連絡会議も参画する。
同ネットワークの立ち上げに向けた会議の参加者の多くが支援団体で「建設業はうちだけ。みんな驚いていた」と桑原会長。「建設業が目を向けてこなかった領域に入ってイメージチェンジしなければ、人手不足の中で淘汰(とうた)される一方だ」との危機感が、これまでの活動の殻を破る原動力になった。誰もが活躍できる建設業界への歩みを、今後も進めていく。
=おわり
(編集部・坂口恭大)