政府は24日、インフラシステムの海外展開を巡る新しい戦略を決めた。世界のインフラ市場の成長を見据え、インフラシステムなどの2030年受注目標を45兆円(現行25年34兆円)に設定した。官民のさまざまな主体の連携を促し、公的・民間資金を積極的に活用しながら魅力的なメニューを相手国に提案する。首相らのトップセールス、PPPによる上流からの案件形成、公共交通指向型都市開発の提案、防災企業の海外展開などに力を入れる。
経協インフラ戦略会議(議長・林芳正官房長官)が「インフラシステム海外展開戦略2030」を決定した。20年に策定した戦略2025の後継となる。25年に810兆円と推計される市場が30年には1084兆円に拡大すると想定。戦略は「成長分を日本企業が取る」(内閣官房幹部)のが狙い。
企業が海外市場に目を向ける中、リスクとニーズが複雑化している。新興国企業の成長によって日本企業の競争力の低下が懸念され、債務の増加に慎重な相手国もある。「土木インフラの需要がある半面、(従来の)売り切りが通用しなくなっている。価格で勝てない事例が散見」(同)と課題は多く、ソフト面の価値も組み合わせた提案や、相手国を含めた民間資金の流入を進める。標準化・ルール整備への関与も強める。
首相らによるトップセールスは戦略2025を上回る年間250件以上を目標にした。案件形成を支援する「提案力強化」と、PPP事業などを支援する「継続的関与」の目標は、それぞれ戦略2025と同じ年間55件以上、年間70件以上とした。
具体的な施策は、「稼ぐ力」の向上、国際競争力強化、経済安全保障、国益の確保、GX・DXなどをキーワードに列挙した。相手国の課題を解決できる企業と公的機関が連携した「オファー型協力」を進める。工業団地を含めたスマートシティー、公共交通指向型都市開発、複合的まちづくりの調査・実証の支援、インフラ・サービスの提案などで案件を獲得する。
不確実性があっても企業が収益を上げるための政府補助「バイアビリティ・ギャップ・ファンディング」や、官民のリスク分担、スタートアップと中堅・中小企業の事業参入も推進する。経済安全保障上の重要なインフラ、地域の案件は同志国と共に対応し、インフラ整備に対する公的支援を強化する。
GX・DXの対応として、都市の脱炭素化と強靱化、原子力発電プロジェクトへの参入支援も促す。防災分野は、知見・技術のある企業の海外展開を支援する。被害を減らすインフラへの投資、防災体制の拡充に協力する。環境分野は廃棄物発電やアスファルト再生など「質の高い環境インフラ」の展開に取り組む。