大阪府は地球全体の平均気温が産業革命以前と比べて2度上昇した場合、府域の降雨量が全国平均の1・1倍を上回る1・15倍に達し、一部流域で最大172トンの治水能力が不足する可能性があることを確認した。降雨量の増大に備え、従来の河川整備と多層的な水害対策を行う「流域治水」を一層推進するとともに、流域の特性に応じて河川整備基本方針の見直しを進める考えを示した。
23日に大阪市内で開いた大阪府河川整備審議会治水専門部会の2024年度第2回会合で、国での検討や最新の気象データなどを用いた独自の気候変動シミュレーションに基づく安威川(茨木市、摂津市など)と穂谷川(枚方市)、佐野川(泉佐野市、熊取町など)の各流域の流量解析結果を説明した。
気候変動の影響で増加が見込まれる計画ピーク流量は安威川流域で毎秒1500トン(現1250トン)、穂谷川流域で240トン(210トン)、佐野川流域で170トン(160トン)に及ぶとされた。対して安威川流域で172トン、穂谷川流域では7・3トンの治水能力不足がそれぞれ見込まれ、田んぼダムや公園・校庭貯留といった流域対応だけでは増分をカバーできない可能性を示唆した。
一方、佐野川流域は増加するものの現行の流域対応による低減量で十分カバーできることを確認した=表参照。
府管理河川の整備は現在までに下流側からおおむね3割の区間が完了。府の担当者は残りの河道改修を着実に推進するとともに、府が進めてきた「逃げる」「しのぐ」「防ぐ」施策を組み合わせた「手戻りのない治水対策」を個別流域の河川整備基本方針に落とし込んでいくとしている。
会合では不足への対応を流域ごとに考える必要性が指摘された。委員からは「流域特性に応じた柔軟なアプローチを取るべきだ」との意見が出た。さらに「既存施設を最大限活用することで不足を補うことができる」「短期的な不足解消と長期的な治水計画の両面で取り組む必要がある」との意見もあった。
府は25年1月に予定する答申を踏まえ、具体的な対応策の検討を進める。