◇3日間で重要防災拠点へルート設定
東北地方整備局と管内の県・仙台市ら道路管理者と警察、自衛隊、建設業協会などで組織する東北道路啓開等協議会(会長・木村康博東北整備局道路部長)は25日、大規模災害時の応急対応に必要な緊急輸送道路を早期確保するため「東北道路啓開計画」(初版)を策定した。管内105路線(約6000キロ)の啓開計画を作成。発災から3日間(72時間)で重要防災拠点までを結ぶルートを設定した。
東日本大震災では「くしの歯作戦」により、国道45号を中心に横方向の太平洋側へ15路線の救援ルートを7日間で切り開いた。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震が切迫されるなか、各県が公表する最大クラスの被害を想定し、東北管内の防災拠点となる1314カ所へつなげるアクセス優先度と啓開路線のタイムラインを設定した。大雪による大規模な車両滞留を回避するための集中除雪などの対応策も計画に盛り込んだ。能登半島地震の教訓を踏まえ空路や海路を活用。各県にある空港や重要港湾などを防災拠点に設定し、半島でのアクセスルートを確保する。
同協議会は管内の消防、ライフライン事業者を含め関連する42機関で構成。道路啓開計画は、東北全体版と6県版を策定した。
道路啓開区間は、東北整備局管内事務所や県庁、市町村役場など災害の指揮・命令を行う拠点として332カ所を「最重要防災拠点」として「アクセス優先度1」に位置付ける。広域的な災害応急対策のため人員・資機材が集結する防災道の駅や防災SA、第3次救急医療施設など115カ所を「重要防災拠点」に「アクセス優先度2」と設定。72時間以内に啓開予定の路線沿線の防災拠点155カ所を「アクセス優先度3」、その他の712カ所の防災拠点を「アクセス優先度4」とする。
啓開のタイムラインは「東北地方新広域道路交通計画」(2021年7月)を踏まえて設定した。発災後12時間以内に東北縦貫自動車道や東北中央自動車道、三陸沿岸道路など高規格道路を中心に42路線、約2500キロを最優先で啓開完了を目指す。被災が大規模で早期啓開が困難な区間は、並行する代替路も含めて12時間以内に緊急車両の通行を可能とする。発災後24時間以内に、主要国道を含め27路線、約2500キロで最重要防災拠点(アクセス優先度1)を目指す。発災後48時間以内で重要防災拠点(アクセス優先度2、3)へつながるルート41路線、約700キロの啓開を完了させる。発災後72時間以内に全ての重要防災拠点への啓開完了を目指す。
啓開作業の実動部隊となる東北建設業連合会(千葉嘉春会長)ら各県建設業協会と対応エリアや必要な資機材の保有状況を共有することで、迅速な出動態勢も構築。がれきの集積場所などの情報も共有する。初期の道路啓開は緊急車両の通行のために1車線分(幅員はおおむね4メートル程度)を通れるようにする。
雪害は、21年3月に改定した「大雪時の道路交通確保対策中間取りまとめ」を受け「人命を最優先に、幹線道路上での大規模な車両滞留を徹底的に回避する」ことを基本的に対応する。集中除雪による早期開放に努めるとともに、各県ごとに定める「大雪時に実施する事項(タイムライン)」などを反映した体制で通行止めなどを実行する。
協議会では、大規模災害時に確実に機能する道路ネットワーク整備の推進と「地域の守り手」となる建設業が持続的に成長できる環境整備も指摘。平時から啓開路線に関する情報共有や必要な調整を図る。計画は毎年確認・更新していくとともに、関係機関が連携し、定期的に模擬訓練を実施することで実効性を高めていく。