国交省/標準労務費を多様な契約実態で対応例示、施工条件踏まえ適正額の増減許容

2024年12月27日 行政・団体 [1面]

文字サイズ

 国土交通省は改正建設業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の一環で、契約段階の運用方針をまとめた。個々の工事で見積書の取り交わし方や請負契約の実態にさまざまなケースがあることへの対応に主眼を置く。施工条件が悪い場合や生産性を高める場合、標準労務費からずれた額での見積もりを許容するケースを例示。下請から適正額を積み上げる前に受発注者間で先に契約するケースなどで、元請が注意すべき事項も明らかにした。
 26日に開いた中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で運用方針の案を提示した。現時点で想定する15の論点で、改正法の趣旨などに沿った考え方を整理した=表参照。改正法では労務費を内訳明示した見積書の作成と、その内容の考慮を契約当事者の努力義務とする。この具体的な対応について議論を深め、2025年12月までの施行に当たって国がガイドラインを定める。
 国交省は標準労務費からずれた額での見積もりが許容されるケースとして、小ロット工事などを挙げる。標準労務費は「公共工事設計労務単価×標準的な歩掛かり」の計算式が前提。小ロットでは歩掛かりが悪くなるため高い労務費が適正になるとの考えを示す。
 これとは反対に、生産性向上で歩掛かりを良くすることで労務費を低く見積もることも容認する。ただし、その歩掛かりで施工できる理由を注文者や建設Gメンに説明できることを前提とする方向だ。歩掛かりが変わらないのに労務単価を引き下げていることが判明すれば違法行為となる。標準労務費と同額で見積もっていても労務単価を下げ、歩掛かりを悪くすることで帳尻を合わせるケースも想定され、これを適正とすべきかどうかを検討課題とする。
 元請が下請から見積もりを取らないうちに発注者に見積書を提出するケースでは、事後的に行われる下請契約で適正額を確保する必要性を訴える。下請による労務費の請求が想定以上に多額であっても、標準労務費に照らして適正額であれば、発注者との契約額を理由に下請にしわ寄せすることは業法違反になり得るとの見解を示す。これを防ぐために発注者への見積もり段階から標準労務費の活用などによる計上額の算定が求められると言えそうだ。
 WGでは当面、実効性の確保策を深掘りする。25年2月には適正な労務費・賃金の行き渡りを担保する仕組み、同3月には公共工事での対応を議題とする予定だ。