2025新年号/業界展望・2、建設産業行政

2025年1月1日 特集 [12面]

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 ◇改正業法施行、現場に浸透へ
 建設産業行政にとって大きな一歩を踏み出す年になる。2024年6月に成立した改正建設業法・公共工事入札契約適正化法が25年12月までに全面施行され、新たに国が設定する「労務費に関する基準(標準労務費)」をベースとした著しく低い労務費などの見積もり・契約規制が発効となる。これまで分かりにくかった労務費の相場観を国が率先して示すことで、建設工事の請負契約の商習慣を大きく変容させようとしている。
 国土交通省の平田研不動産・建設経済局長は改正業法を通じ「適正水準を積み上げる、いわば下流から上流へと価格が決まる新たな商習慣の形成を図っていきたい」と訴える。「もらったら払う」という考え方では、重層的な請負構造のどこかでボトルネックが生じてしまえば現場を担う技能者まで十分な賃金は行き渡らない。賃金原資となる適正な労務費の確保を前提に価格が決まる仕組みに転換するには、発注者を含めた建設工事のサプライチェーン(供給網)全体で標準労務費が実際に「使われる」ことが重要となる。
 標準労務費の作成・運用の検討主体となる中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループは公共工事と民間工事の発注者から、受注者となる建設業者までが一堂に集まり、実際の現場で使われる労務費の見積もり・契約の「共通言語」(平田局長)をつくる場となる。単なる法規制の運用で合意する場とは異なり、建設業界をはじめすべての関係者が当事者として主体的に議論に参画することが求められるだろう。
 こうした処遇改善の取り組みとともに、建設業の担い手を確保するには働き方改革が急務となる。国交省が「毎月勤労統計調査」を基に算出したデータによると、時間外労働の罰則付き上限規制が建設業で適用となった24年4月から5カ月間の出勤日数・実労働時間は、建設業が全産業平均より2・8日、12・6時間長かった。ただ19年4月から5カ月間では4・6日、30・8時間の開きがあり、他産業と比較し働き方は改善傾向と言えそうだ。
 さらなる働き方改革の推進には工期の適正化や業務の効率化が不可欠。国交省の24年1月時点の調査では、工期設定で注文者の意向が優先されたり受注者の要望が完全に受け入れられなかったりするのは約2割。注文者の意向を優先し協議を依頼しないことが多いのも約2割に上った。国交省は改正業法の趣旨に照らし、まずは適切に協議を行うことが重要と指摘する。
 中建審が同3月改定した「工期に関する基準」では、上限規制を順守した工期設定への注文者の協力などを追記した。国交省は上限規制に抵触するような長時間労働を前提とした短い工期で発注者や元請が契約した場合、業法で禁止する「著しく短い工期」に該当する違反行為に当たるとの見解を示す。著しく短い工期による契約締結を受注者にも禁止する改正業法の措置を踏まえ、受発注者・元下双方で徹底した対応が求められる。