職域代表として建設業界の発展に尽力してきた自民党の足立敏之(あだち・としゆき)参院議員が昨年12月27日、訪問先のインド洋の島国モルディブで死去した。70歳だった。通夜は10日午後6時、葬儀は11日午前10時30分から増上寺光摂殿(東京都港区芝公園4の7の35)で行われる。喪主は長男の悠介(ゆうすけ)さん。葬儀委員長を前首相の岸田文雄衆院議員が務める。
事務所の報告によると、死因はシュノーケリング中の溺死とされる。足立氏は今回の渡航は家族同行のプライベート(私費)での訪問だったが、2004年のスマトラ島沖で発生した地震による津波被害を受けた現地の視察も計画。日本の技術で整備された防波堤が被害軽減につながり、事前防災の効果や離島のインフラの状況などを見た上で、帰国後に報告する予定だったという。
足立氏は京都府出身。1979年に京都大学大学院工学研究科を修了し、建設省(現国土交通省)に入省。2009年四国地方整備局長、11年中部地方整備局長、12年水管理・国土保全局長、13年技監などを経て、16年参院選の比例代表で初当選。現在2期目だった。
河川畑を長く歩き、宮ケ瀬ダム工事事務所長を務めるなど、土木技術者として社会インフラの整備に従事。欧州での水害調査の際にドイツで災害対応に当たる「技術支援隊」の存在を知り、国交省時代にテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の創設に注力した。
6日に開かれた建設業関係11団体の新春賀詞交歓会に出席した中野洋昌国交相は「建設業の将来を案じ、時に厳しく、時に包み込むような優しさで建設業界の発展と安定に尽力いただいた。先生からの指導と叱咤(しった)激励が受けられないのは、この上なく寂しく、痛恨の極みだ」と足立氏の死を悼んだ。
建設職域代表である佐藤信秋参院議員(自民党)は日刊建設工業新聞に「これまで建設産業のために頑張ってこられ、これからも大いに活躍していただけると期待していた。本当に残念でならない。私が7月に参院議員を引退した後も公共工事品質確保促進法や国土強靱化基本法の運用などに尽力いただきたかった。心よりご冥福をお祈りいたします」と追悼のコメントを寄せた。
□日建連・宮本会長/業界の健全な発展に尽力□
日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は足立敏之参院議員の訃報を受けコメントを発表した。
このたびの足立敏之参院議員の訃報に接し、つい先日までの臨時国会においてご活躍されていたお元気な姿を思い浮かべますと、とても現実のこととして受け入れ難く、信じられない思いであります。
足立議員は2016年の初当選以来、「建設産業の再生なくして、日本の再生なし」をスローガンに、建設業界の職域代表として、私ども建設業の健全な発展に向けて、国会内外で幅広く活動を展開されてこられました。防災・減災、国土強靱化の加速化はもちろん、昨年6月の第3次担い手3法の成立は、足立議員の積極的な活動がなければ成しえなかったと言っても過言ではありません。
22年に2期目の当選を果たされ、まさにこれからが議員活動の円熟期に入る矢先での突然のご逝去は、私ども建設業界にとりまして深い悲しみであり、痛恨の極みであります。
足立議員のご逝去を心よりお悔やみ申し上げますとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。