東京都の都心3区(千代田、中央、港)では2025年、多数の大規模プロジェクトが本格始動する。六本木五丁目西地区(港区)の再開発は25年度中にも権利変換計画の認可を得て、約9.2haの施工区域内で既存建物の解体に着手する見通し。日本橋一丁目東地区(中央区)は3月にも権変認可を取得し、既存建物の解体に取りかかる。建築費が高騰する中でも大手デベロッパーによる開発意欲は旺盛な状況。東京都心部の25年は24年に引き続き、つち音が鳴りやまない1年になりそうだ。
港区内で進展中の第1種市街地再開発事業のうち、本組合の設立認可を得ているのは15件。うち北青山三丁目地区と高輪三丁目品川駅前地区が24年度中にも権変認可を得る予定だ。
北青山三丁目の再開発は都市再生機構が施行し、オフィスや店舗、ホテルなどで構成する2街区総延べ18・1万平方メートルの規模の施設群を整備する。25年度の新築着工、29年度の竣工を目指している。
高輪三丁目品川駅前地区は26年度の新築着工、28年度の竣工を目指しているものの、工事価格の高騰などが影響し、特定業務代行者の選定手続きが長引いている。総事業費は24年2月の本組合設立認可時で1445億円を見込んでいたが、増額の可能性もある。
港区ではこれらに六本木五丁目西地区の再開発が加わる。六本木ヒルズの東側にあるエリアを再開発し、総延べ108万平方メートルの施設群を整備する。施行区域は南北に長く、東西方向の交通利便性が課題。再開発では東西・南北方向の歩行者ネットワークを拡充するほか、滞留空間が少ない六本木交差点に面して大規模な広場を整備するなど、周辺の都市構造を大きく変える影響力を持つ。
区域内には商業ビルの六本木共同ビル(六本木ロアビル)や、国の登録有形文化財に指定されている国際文化会館、東洋英和女学院小学部など多様な施設が立地し、利害が複雑に絡む。準備組合に事業協力者として参画している森ビルの辻慎吾社長は、25年の年頭所感で「非常に難しいプロジェクトで、工事費や工期などの見極めも難しい」と指摘。「権利者の合意形成を進めながら、事業計画の中身を一つ一つ、細部まで詰め切っていく」との考えを示した。
中央区で進展する組合施行の第1種市街地再開発事業のうち、本組合を設立しているのは14件。うち権変認可がまだなのは4件あり、日本橋一丁目東、京橋三丁目東両地区が24年度内の取得を予定する。日本橋室町一丁目、日本橋一丁目1・2番両地区は25年度中の取得を見込む。
最大規模は日本橋一丁目東地区の再開発。日本橋川をまたぐ約3・6ヘクタールのエリアに、5街区総延べ38・4万平方メートルの施設群を整備する。主要施設は日本橋川の南側に位置するA、B両街区に配置。A街区はオフィスやMICE(大規模なイベント)施設、B街区はタワーマンションに充て、いずれも31年度の竣工を目指す。
日本橋川の沿川に並ぶC~Eの3街区は、緑地や散策路になる予定。首都高速道路日本橋区間の地下化後は、緑や水辺に触れ合える、新たな憩いの場になりそうだ。
千代田区内で事業中の本組合は▽神田小川町三丁目西部南▽飯田橋駅東▽富士見二丁目3番-など。うち富士見二丁目3番地区の事業では、JR飯田橋駅の南側に2棟総延べ約4・6万平方メートルの施設群を整備する。25年度に権変認可を取得し、26年度の新築着工、29年度の竣工を目指す。
このほか区内では▽外神田一丁目▽九段南一丁目▽飯田橋駅中央-各地区などで準備組合が活動している。九段南一丁目地区が先行しており、24年度内の本組合設立、25年度の権変認可を見込む。外神田一丁目地区は都市計画・地区計画の決定を得ているものの、合意形成が難航していた。昨年12月に民間同意率が本組合の設立要件となる3分の2に達し、今後は25年中の本組合設立、27年度の権変認可を目指す。
再開発は土地利用の経済性を高め、都市の不燃化や緑地の拡充、交通ネットワークの再構築など公益に大きく寄与する。建築費の高騰をはじめリスク要因は多い。その中でも果敢に開発に取り組む事業者は、日本経済の屋台骨を支える不可欠な存在だと言える。関係者に幅広い社会層からの期待が集まる。