改正建設業法に基づき著しく低い労務費による見積もり提出・見積もり変更依頼を禁止する措置の施行に先立ち、建設工事の取引実態の実地調査に当たる国土交通省の「建設Gメン」が実際の工事契約で問題となる行為をあぶり出す作業に着手している。最初に注文者に提出した「当初見積書」と、価格交渉を経て契約に反映した「最終見積書」の労務費の額を比較し、その積算根拠となる施工数量や人工数を併せて確認。これまでの調査から、交渉過程で労務費が減額され、公共工事設計労務単価を大きく割り込む単価になったケースが明らかになっている。
改正業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」をベースとした見積もり規制は12月までに施行する。国交省は地方整備局などに設置する「建設業法令順守推進本部」の2024年度の活動の一環で、この規制措置の施行を見据え関連する取引実態を先行的に調査し契約当事者に適正な対応を促している。
調査方法として当初見積書と最終見積書で1人日当たりの労務単価を算出。公共工事設計労務単価との比較で当初見積書の労務費が過小であれば、法施行後に問題になる可能性があるとして受注者に改善するよう指導。最終見積書で労務費の減額があった場合、注文者と受注者へのヒアリングで原因を把握し、見積額の変更依頼に起因していれば注文者に改善指導する。
労務費が過小だったり減額されたりする要因が、生産性向上による必要人工の減少の場合もあるため、労務単価の引き下げを伴うかどうか個別に確認するのがポイントだ。民間の鉄筋工事や型枠工事では、労務単価の引き下げを伴う労務費減額のケースを把握している=表参照。
調査の実効性を高める観点で、中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループでは当初と最終の見積書を一定期間保存するルールが必要との意見が出ている。最終的な支払いまでを担保するため、工事完了後の精算でのチェックを求める声もある。技能者に実際支払われる単価・賃金のばらつきを考慮し、その最も低い単価・賃金を併せて確認するとの提案もあった。