「あなたの役割は定点観察ではないか。人の集う復興が進むよう報道し続けてほしい」。20年余の記者生活で一番突き刺さったひと言だ。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故で混乱の最中にあった2011年5月。福島県南相馬市で知人女性の父に言われた▼商業店舗の経営者として仕事を続けていたが、娘の帰郷は拒んでいた。同市での取材後に知人から託された近況写真を持参した。うれしさや寂しさ、悔しさが入り交じった表情を前に、かける言葉が見つからなかった▼専門紙は定点観察メディアだと思う。本紙は、安全・安心な国土づくりやそれを支える関係者にとって有益な情報を扱うのが基本。変わることと変えてはいけないことを書き続けてきたが、反省点も多い▼00年代に建設投資が先細りし多くの人が去った。あの時に国土強靱化を加速していれば現場対応力は違っていたはず。担い手不足もインフラ老朽化も予見可能な未来であったが、訴える力が足りなかった▼ぶれない姿勢を大事にしつつ、目指すべき社会に向かって鋭く発信しなければならない。そうした役割と覚悟が求められる。