能登半島地震から1年/国交省北陸整備局能登復興事務所・杉本敦所長に聞く

2025年1月10日 行政・団体 [2面]

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 ◇皆さんの使命感に支えられて今がある
 能登半島地震で大きな被害を受けた国道249号は、国の権限代行によって一部区間の復旧が進み、2024年1月1日の発災から1年を経ずに全線の通行が可能になった。道路とともに河川、砂防、海岸の災害復旧などに尽力している国土交通省北陸地方整備局能登復興事務所の杉本敦所長は「本復旧のスタートに立てるところまできた。皆さんの努力で全力で取り組める」と話す。
 国道249号は大規模な土砂崩れや路面の崩壊、トンネルの損傷が相次いだ。石川県輪島市~珠洲市の沿岸部は、同12月27日に通行が確保された。被災区間は応急対策を講じ、海底地盤の隆起部も活用して道路機能を回復させた。今夏には一般交通の2車線通行を予定している。大動脈の能越自動車道・のと里山海道は7月までに全線の通行が確保され、走行性と安全性を高める本復旧が進んでいる。
 河川・土砂災害の復旧は、24年9月の豪雨で発生した河川閉塞(へいそく)、土砂・洪水氾濫の対応が続く。津波被害の大きかった宝立正院海岸(珠洲市)は本復旧に着手した。
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 能登復興事務所は復旧・復興の加速と強力な推進を目的に同2月16日、七尾市内に開設された。当時は各地の緊急対応のさなかにあり、杉本所長は「道路啓開をいつ終わらせられるか見えにくかった。(被害の)未調査の区間もあった」と振り返る。国交省は「復旧・復興の前線基地を設ける」という方針を早々に決定。政府を挙げた予算、人員の手当ても進み、「やるべきことをしっかり進められる体制」を敷き、緊急対応に取り組んできた。
 発災後、半島内の各地で、地域建設会社や全国規模で事業展開するゼネコンをはじめ建設産業の各社が、緊急の工事や業務に奮闘した。杉本所長は「移動に苦労し、寝泊まりの場所も限られた。皆さんの使命感に支えられて今がある」と謝意を示す。
 24年9月の豪雨は土砂崩れなどの被害があまりに大きかった。復旧を巡っては、緊急工事の現場の写真と「つなげる何度でも」のメッセージを載せたポスターを投稿したSNSへのアクセス数が数十万に達した。早期復旧への地域の期待と応援は大きく、「建設業が頑張っていることをもっとアピールする」という。
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 災害査定が進み、被災地は地方自治体の復旧工事も本格化してくる。課題の一つに生コンクリートやアスファルト合材といった資材調達を挙げ、製造と搬送の両面から最適な対応を検討する考え。ドローンなどの新製品や情報通信の新技術などが調査や工事に活用されてきた。現場の安全確保が欠かせず、人の代わりになる技術への関心をさらに高めていく。
 最前線の現場に近い事務所の開設は「被災地の人の安心感につながった」と捉えている。道路のように、インフラの復旧は安全性と同時に半島各地の優れた景観への配慮も求められてくるとみて、地域とのコミュニケーションを引き続き重視する。
 「元通りは難しくても少しでも安全に生活していただきたい」。インフラや地域の安全に関する情報の発信に力を入れ、降雪への対応や、出水期、梅雨を見据えた備えも念頭に復旧・復興にまい進する。