国土交通省は2025年度、地滑りの再度災害防止や盛り土の耐震対策強化に乗り出す。補助事業しかなかった地滑りの再度災害防止対策に直轄事業を創設する。地方自治体による緊急輸送道路の盛り土補強に個別補助を設けたり、内陸にある空港の盛り土部分で緊急的に調査や対策をしたりする。25年度予算案に必要経費を盛り込んだ。能登半島地震で浮き彫りになった課題を踏まえ、有事でもインフラ機能を維持するための対策を講じる。
25年度から「直轄特定緊急地すべり対策事業」「道路盛土のり面防災対策補助制度」「盛土空港における耐震対策」の三つを進める。緊急地滑り対策事業には4億円を計上した。国が復旧工事をしている箇所のうち、工事後も応急安全度を確保できていない箇所を対象に、直轄事業で5年以内の短期集中による対策を実施。応急復旧から再度災害防止対策に速やかに移行することで切れ目ない対策につなげる。
再度災害防止対策として、復旧工事と同様に不安定土砂の排除や横ボーリングによる地下水排水などの抑制工を施工。集水井設置や杭、アンカーといったより本格的な抑止工も行う。
地滑りを巡っては、これまで国直轄で再度災害防止対策を行う仕組みがなかった。事業手法が県などの対策事業を補助する「特定緊急地すべり対策事業」か「地すべり激甚災害対策特別緊急事業」に限定されていた。25年度から直轄の災害復旧工事を実施している能登半島の被災地を対象に適用する方針だが、恒久的な仕組みとして将来の災害時にも活用していく。
道路盛り土のり面防災対策には4億円を配分した。▽緊急輸送道路▽盛り土高が約10メートル以上▽地山傾斜地など集水地形にある盛り土-の三つを要件に、事業費の55%を補助する。
能登半島地震では緊急輸送道路の能越自動車道で盛り土の大規模な崩壊が多数あり人員、物資の輸送に支障を来した。特に沢を埋め立てた盛り土の被害が多かったことから、地震後に全国の緊急輸送道路でのり面の点検を実施している。今後、点検結果に基づいた対策工事が本格化することから、新制度を設けて集中的に自治体を支援する。
盛土空港の耐震対策には13億円を計上した。24年度補正予算で配分した2億円と一体で事業を進める。空港の地盤対策はこれまで液状化対策が中心だった。能登半島地震で「のと里山空港」の滑走路に大きな亀裂や段差が発生し固定翼機の離着陸ができなくなった。
原因として空港建設時に造成した盛り土が地震で沈下したことが指摘されたことから、全国で同様の盛り土構造を持つ空港を緊急的に調査。地震で同じような被害を受ける可能性がないかを調査し、必要があれば対策工事を実施する。