神戸のメリケン波止場は1860年代に第三波止場として造られた。一説では近くに米国領事館があり、当時の人々が「アメリカ」を「メリケン」と聞き間違えて波止場の名称になったという▼時代は移り変わり、1987年に中突堤との間を埋め立てて造成されたメリケンパークが完成。その東端に位置するメリケン波止場は、95年1月の阪神・淡路大震災で護岸が崩れるなど大きな被害を受けた。現在は被災した波止場の一部がそのままの状態で保存され見学できる▼震災発生の数日後、先輩記者らと取材先の船に乗せてもらい神戸港に着いた。陸路の交通渋滞を避けるためで、記事を読み返すと新港第一突堤に着岸している▼被災地に急ぎ向かったものの都市直下型地震のすさまじい被害を目の当たりにし、一体何から取材したらいいのか途方に暮れてしまった。そんな中で懸命に救援物資の調達や復旧工事を進める建設業の人たちがどれほど頼もしく見えたことか▼先日久しぶりに神戸を訪れ、波止場の震災遺構を見学した。震災から30年。復興を遂げ繁栄する神戸で、崩れた波止場はこれからも貴重な教訓を伝えてくれる。