日本空調衛生工事業協会(日空衛、藤澤一郎会長)が、建設業界にBIMの普及を促すための提言をまとめた。「BIMの健全な導入・発展」を掲げ、データの権利保護や適正な報酬水準、円滑なデータ共有に向けた標準化などについて、会員企業らに考え方を周知する。提言書は元請団体や国土交通省にも配布するほか、要望活動などに活用する方針。15日に日空衛ホームページで公開した。
「BIM実装社会に向けて提言」は、実務者でつくる日空衛BIM推進委員会(小島和人委員長)が主導。▽権利保護の考え方▽報酬水準の考え方▽施工標準活用の考え方-の3項目で構成する。会員各社から集めたアンケートや事例を基に課題を洗い出し、対策を提案する。
権利保護では、設備工事会社も設計・施工段階のBIMデータの著作権を有することを明記した。施工各社のノウハウを保護する観点から、事前に権利関係を定めた覚書を交わすことを要望する。報酬水準については、標準的な図面による設計作業に比べ、BIM作成の業務量が建物によっては平均で3倍に上ると指摘。実情に応じた対価設定を求める。BIMを使ったシミュレーションデータの作成やデータ共有環境の構築といった付随業務は別途、請負契約を結ぶべきとした。
施工標準の活用では会員企業から募った活用事例を分析し、「前工程」や「施工者側」の課題を検討。設計から施工へ円滑にデータを引き継ぐため、建築レイアウトの早期確定やBIMモデルへの情報入力、ファミリ(部材の形状情報と属性情報)の標準化を推進する。異なるソフト間でBIMを融通しやすくなるよう、プロパティ情報を標準化する必要にも言及した。BIMを操作できる人材の育成にも注力すべきとした。
藤澤会長は同日に東京都内で開いた記者会見で、技術者の働き方改革には「BIMが工事のプラットフォームになることが肝心」と強調。その上で「就任当初(22年5月)の目標がある程度形になってきた。大企業では導入が進んだが、中小規模の企業でも活用する流れにしていく。普及率を現在の約10%から少なくとも50%以上に高めるため、業界団体としてもう一押しする必要がある」と述べた。日本電設工業協会(電設協、文挾誠一会長)とも協力していく考えを示した。