阪神・淡路大震災から30年/教訓や対策の蓄積を次世代に、建設業の応災力さらに強化

2025年1月17日 論説・コラム [1面]

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 1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災から30年。インフラや住宅・建築物の甚大な被害から、構造物の技術基準の見直しや耐震強化といったさまざまな対策が講じられてきた。それでも1年前の能登半島地震は、防災・減災を巡る多くの課題を浮き彫りにした。避けられない災害にどう向き合い、起きてしまった災害にどう応じるか。備えの在り方は問われ続けていく。=10面に関連記事
 阪神・淡路大震災は、死因の4分の3が圧死だったこともあり、耐震基準の抜本的な見直しと耐震強化を迫った。発災から1年を経ず95年12月には耐震改修促進法が施行され、建築基準法の改正などが続いた。
 公共施設の耐震化や、より地震に強い建物の整備が促されたものの、住宅の耐震化率が全国平均(87%)を下回る石川県輪島市(45%)、同珠洲市(51%)は能登半島地震で家屋が損壊。多くの被害者、避難者が発生した。災害関連死が直接死を上回った一因に耐震性を挙げる見方もある。
 こうした被害を受け必要な対策を検討した中央防災会議の有識者ワーキンググループ(WG)の福和伸夫主査(名古屋大学名誉教授)は「建築基準は(安全の)最低水準。社会の安全レベルをどのくらいにすべきか考えることをわれわれは学んだ」と指摘する。
 阪神高速道路の倒壊は、阪神・淡路大震災を表徴する構造物の被害として災害史に刻まれた。当時、現地調査に参加した京都大学の高橋良和教授は7日の防災学術連携体のシンポジウムで「日本の耐震技術の自信が崩れ去った」と話した。道路橋示方書の改正、設計地震力の導入、2段階耐震設計・免震設計といった概念が持ち込まれ、道路以外のインフラの在りようも再検討された。
 東日本大震災や毎年の風水害で機能を維持したインフラがあるものの、能登半島地震はトンネル覆工の崩落、緊急輸送道路の盛り土崩壊といった課題を突きつけた。国や地方自治体らが対処しているが、高橋教授は「自分たちの能力・知識を過信せず、真摯(しんし)に、誠実に、できることから一歩ずつでも前に進もう」と呼び掛けた。
 未曽有の被害が想定される南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念される中、阪神・淡路大震災や2011年3月の東日本大震災の教訓でもある事前防災の必要性が、能登半島地震で一段と高まった。必要な取り組みを推進するため、政府は石破茂首相の指示で防災庁の26年度開設に動いている。
 「(大地震に対する)業界の迅速性、的確性は向上してきている」。日本建設業連合会関西支部の北岡隆司支部長は、国土交通省近畿地方整備局が15日に開いたシンポジウムでそう話した。ゼネコン、地域建設会社とも、技術力と人員、資機材の調達・マネジメント力を有事の現場で駆使してきた。北岡支部長は建設業の応災力強化にまい進する考えも表明した。
 復興まちづくりやがれき処分など、阪神・淡路大震災を機に進んだ取り組みは多岐にわたる。「30年蓄積してきたノウハウを次世代につなぎ、総合的な防災ができる人材を育てていく」(防災学術連携体の米田雅子代表幹事)。官民を挙げた防災・減災、国土強靱化によって、安全・安心を目指す国のかたちを整え続けねばならない。