鹿島/無響室をリニューアル極限まで性能アップ、つり構造で理想的な無響状態実現

2025年1月17日 企業・経営 [3面]

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 鹿島は技術研究所(東京都調布市)西調布実験場内の無響室をリニューアルし、極限まで無響性能を高めた。無響性能の妨げとなっていた測定対象を支える装置や床などの反射物をなくし、測定機器や測定対象物をワイヤで空中に浮かせる構造を確立。理想的な無響状態で音響計測できる。より高品位な音響空間構築の技術開発を進める。英サウサンプトン大学と共同開発した立体音響技術「OPSODIS」(オプソーディス)の性能向上に向けた開発に活用する。
 リニューアルした無響室は壁や床、天井の吸音材料をグラスウールから、ポリエステル系の吸音材料でできた「吸音くさび」に変更。室内の反射音を減衰させる。無響室の天井裏(吸音くさびの外側)には、十分な荷重に耐えるキャットウオークを設けた。
 キャットウオークから音をほとんど反射しない細いワイヤやシャフトを貫通させ、測定対象や測定機器を天井からつり下げて空中に浮いた状態を構築する。測定時は照明や測定準備に使用した足場も撤去できるため、反射物となる大掛かりな測定装置を床面に設置せず、測定対象物だけが無響室内に浮かぶ理想的な無響状態の中で音響を測定できる。
 機器をつるすワイヤは、四方の壁の奥に仕込まれた装置でミリ単位の位置調整が可能。さらにキャットウオークに設置した回転装置によって0・1度単位で回転調整でき、さまざまな条件での測定を可能にした。
 鹿島はこれまで音楽ホールやスタジオの設計・施工でOPSODISを搭載した音響解析シミュレーターを活用し、優れた音響性能の施設を提供してきた。今後、高性能無響室を積極的に活用し、さまざまな形状や材質の壁、床、天井面の音響特性を詳細に把握することでより高品位な音響空間の構築を目指す。さらに高精細なデータを数多く取得し、オーディオ分野など建設業の枠を超えたOPSODISの活用、普及に挑戦していく。
 OPSODISを活用した小型スピーカーも開発している。建築環境グループの矢入幹記上席研究員は「小型から大型まで対応できる。スピーカーが認知されれば、オフィスやサウンドスケープなど建築分野にも展開できる」という。