三菱地所と東宝が計画している国際ビル・帝劇ビル(東京都千代田区)の一体的な建て替えに関連し、東宝は16日、新たな帝国劇場の概要を発表した。コンセプトは「THE VEIL(ザ・ベール)」。薄い布をまとったような、曲線を多用した外観が特徴だ。エントランスから客席、舞台まで幾重ものベールをくぐるような空間構成とし、神秘性や格式を高める。設計は指名型プロポーザルで選ばれた建築家の小堀哲夫氏が担当している。
同日現地で記者発表会を開いた。東宝の池田篤郎常務執行役員エンタテインメントユニット演劇本部長は「これまで根底を流れていた『芸術性と大衆性の融合』という精神を受け継ぎ、『オーセンティック(本物であること)』を旨とし、新しい世紀に向かって歩みを進めていく」と意気込みを語った。
小堀氏は、西側に皇居の緑やお堀の水面といった自然が豊富にある一方、東側には丸の内のビル街が広がる立地環境を説明。「唯一無二の場所だということを分かっていただける建築の作り方が大事だと思った」とし、「皇居側は自然をまとったベール、まち側はにぎわいがにじみ出すようなベールであるべきだと考えた。新しい空間体験を実現したい」と話した。空間構成に当たっては自然光の効果的な導入も鍵になると捉えている。
新たな劇場はエントランスを入って真正面に客席や舞台を配置する。舞台装置には、コンピューター制御の「オートメーション機構」を採用。舞台面と奈落が連動し、複雑な演出にも対応する。客席の傾斜は現状より高くし、舞台を見やすくする。地下街とつながる部分にも大規模なエントランスを設け、エスカレーターなどで地上に接続する。
建築費が高騰している状況に対し、池田氏は「帝劇は東宝にとって一大ブランド、ランドマークで、造ることには強い意志で臨んでいる」と強調。「小堀氏や施工者と協業しながら、費用コントロールを詰めていきたい」と述べた。